メルセデスF1は2025年F1シーズン第2の3連戦(イモラ、モナコ、スペイン)で深刻な失速に見舞われ、フェラーリにコンストラクターズ選手権2位の座を明け渡すどころか、レーシングブルズにも得点で後れを取るという厳しい状況に陥った。シーズン開幕当初はマクラーレンの最大の挑戦者とも目されていたが、3戦で獲得できたのはジョージ・ラッセルによる4位と7位の2回のみ。
技術面と信頼性の両面で問題を抱えたこの一連のレースは、技術責任者のジェームス・アリソンに言わせれば、まさに「打ちのめされた」状態だった。アリソンはレース後の技術ブリーフィングの中で、1978年の小説『ガープの世界』を引用しながらこう語った。「ガープという登場人物は、軽飛行機が衝突した家を購入する。“これ以上悪いことは起きないだろう”という理由でね。今の我々も、イモラとモナコで予期せぬリタイアが続いたことで“プレ災難”を経験した。だから、今後は運が向いてくれると期待している」誤ったセットアップが招いた連鎖的苦戦メルセデスW16は開幕戦バーレーン以降、タイヤデグラデーションの改善などポジティブな兆しを見せていたが、サウジアラビアとマイアミの高温条件でリアタイヤの温度管理に課題があることが露呈。これに対応すべく、イモラではリアサスペンションのピックアップポイントを変更した新設計を導入した。しかし、その性能は期待に届かず、モナコからは旧仕様に戻す決断を下した。アリソンは、「イモラとモナコではリアアクスルに過度の負担をかけるセッティングをしてしまった」と分析し、スペインではその反省を活かして改善が見られたと述べている。「バルセロナでは以前のようなセットアップのアプローチを変えた。あのサーキットでイモラやモナコと同じような攻め方をしていたらタイヤが崩壊していた。今回はそうならなかったことが前進の証だ」エンジンプールにかかる重圧さらに深刻なのは信頼性の問題だ。キミ・アントネッリはイモラとバルセロナで2度のリタイア。イモラではスロットルセンサー、スペインではパワーユニット(PU)関連のトラブルが原因だった。ラッセルもモナコでの予選中にエンジンワイヤーハーネスに不具合を抱え、パフォーマンスを大きく損なった。バルセロナのPUは「致命的損傷」とされ、次戦カナダでの新品投入が濃厚。その場合はペナルティは回避できるが、シーズンを通じてのエンジン運用に大きな制約がかかるとアリソンは警鐘を鳴らす。「今はまだ年間使用制限には達していないが、シーズンはまだ3分の1を過ぎたばかり。残されたPUのライフサイクルをどう管理するかが非常に重要になってくる」アントネッリに残された精神的打撃18歳のルーキーであるアントネッリは、3連戦で2度のリタイア、モナコでは予選クラッシュと苦しい流れが続いた。表情こそ明るく振る舞っているものの、アリソンは「この数戦でキミの心には確かに“傷”が残った」と語る。「彼は若くて楽観的なエネルギーに満ちているが、この短期間で2回のリタイアという現実は相当こたえている」アントネッリ自身もスペインGP後に、「今は頭をリセットする良い機会。すべての学びを整理して、カナダでは強くなって戻ってきたい」と前向きな姿勢を見せた。また、スペインで投入された空力パッケージに手応えを感じたとも述べ、「クルマのフィーリングは良かったし、リアサスペンションに関しても良い学びがあった。次こそ真の効果を発揮できると思う」と語った。
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