メルセデス勢のF1スペインGP決勝レースのオープニグラップでの同士討ちは、ニコ・ロズベルグの“モード設定ミス”が引き金となったFIAは、メルセデス勢の接触について“レーシングインデント”と判断し、どちらのドライバーにもペナルティは科さなかった。FIAスチュワードは、レース後のプレスリリースでこの結論に至った経緯を詳しく説明している。
「問題のインシデントはカーナンバー6(ロズベルグ)が不適切なパワーモードになったことに端を発した。これはスタート前にドライバーが設定したものだ。その結果ストレートへ向かうターン3の出口でカーナンバー6とカーナンバー44(ハミルトン)には大きなパワー差が発生し、ストレートでは2台に最大で時速17kmの違いが生じた」とFIAは説明。「カーナンバー6は自らのポジションを守るべく右に動いており、これはスポーティングレギュレーション27条2項で権利として認められている。一方、著しく速度が勝っていたカーナンバー44は、インサイドにスペースを見い出し、追い抜くために動いた。27条7項は追い抜きを試みるマシンの“大部分”が並んでいる場合、リードするドライバーが隙間を残しておくよう義務付けている」「カーナンバー44のフロントウィングの一部がカーナンバー6のインサイドにあったものの、その直後にカーナンバー44は最初の接触を避けるためにコース右側を離れなければならなかった。カーナンバー44は右側にスペースを持つ権利があると考えるに至った可能性がある。カーナンバー44はコースサイドの芝に乗った後、状況をコントロールできなくなった」「両ドライバーおよびチームから詳細を聞いた結果、スチュワードはカーナンバー6には同ドライバーがとった行動の権利があると判断すると同時に、カーナンバー44のオーバーテイクの試みは合理的なものだったと結論づけた。スチュワートはこの件にどちらのドライバーにも完全、もしくは主とした過失がないと判断し、これ以上の措置をとらないものとする」問題になっているモード設定は、メルセデスのステアリングホイールの左下にあるダイアルによってコントロールされる。そこには“strategy mode”を略して“STRAT”と記されており、燃料流量、またエネルギー回生システム(ERS)のデプロイメントなどのエネルギーセッティングを選択するのに使用される。例えば、フォーメーションラップでは、オープニングラップでリアホイールに最大の電気エネルギーを展開するために、ERSがバッテリーをフルチャージするようSTRATモードが設定される。しかし、日曜日のレースでは、ニコ・ロズベルグは、グリッドを離れる前にSTRATのダイアルを“レースモード”にしなかったようだ。おそらく、ニコ・ロズベルグはおそらく“フォーメーションラップ”用のモードのままでスタートした。新しい無線ルールでは、ドライバーはフォーメーションラップ中に必要なセッティングについて指示を受けることができない。そのため、ドライバーは、シグナルオフの前に全てのスイッチの正しい位置を記憶して、設定しなければならない。ニコ・ロズベルグのモード設定のミスはスタート後しばらくはペースに影響せず、ロズベルグはターン1でアウトサイドからルイス・ハミルトンのマシンを追い抜いた。それはニコ・ロズベルグがグリッドについた際、正しく“レーススタートモード”に設定していたためだ。レーススタートボタンを押すと、メインスクリーンの左に2つのライトが灯り、“レーススタートモード”となる。“レーススタートモード”はターン1に向けた走行に備えるべく他のすべてのセッティングを上書きするため、ニコ・ロズベルグのSTRATモードの設定ミスは陰に潜んでいた。 しかし、ターン3の途中でニコ・ロズベルグが左人差し指でレーススタートモードを解除し、STRATモードのエラーが具現化された。ニコ・ロズベルグのマシンは“フォーメーションラップ”の挙動に戻ってしまった。ルイス・ハミルトンは、レース後のインタビューで、ニコ・ロズベルグが設定をミスしたことで、ERSがパワーを供給するのではなく、リアホイールから回生を始めたため、実質的にパワーユニットから180馬力が失われていたと述べている。回生中にスローダウンしていることを後続のマシンに知らせるため、マシンリアにある赤い雨天用ライトが点灯する。ルイス・ハミルトンにとって、それはニコ・ロズベルグのマシンが何かおかしいことを示すシグナルだった。ターン3の出口でルイス・ハミルトンはニコ・ロズベルグに接近してオーバーテイクに備えた。だが、ニコ・ロズベルグは数秒のうちに事態に気づき、コーナー出口までにSTRATのダイアルを正しい位置に変え、さらにルイス・ハミルトンから逃げるためにステアリングホイールの左上にあるオーバーテイクボタンを押した。しかしながら、コーナー出口のスピードが落ちた影響が出てことで、時速17km勝っていたルイス・ハミルトンがインサイドからのパスを試みた。関連:・【動画】 メルセデス、チームメイト同士で接触リタイア / F1スペインGP・メルセデス:遺恨の残る同士討ち / F1スペインGP - 両ドライバーのコメント
全文を読む