マクラーレン・ホンダ MP4-31は、独自性のあるフロントサスペンションを採用している。マクラーレン・ホンダは、2016年F1マシンの発表の際、『MP4-31』を“革新的”と称していた。バルセロナテストで確認されたMP4-31では、後方のアッパーアームが通常よりもかなり低く配置された非常に思い切った設計をフロントサスペンションが採用されていることが確認された。
フロントサスペンションは、車体の下方と周囲を流れる気流に大きな影響を及ぼすため、レイアウトには細心の注意が必要となる。また、一度デザインしたものを後から変更することは非常に難しい場所でもある。2014年にメルセデスが開拓した結合型のY字型ロアウィッシュボーンは、他チームでも採用されているが、マクラーレンはこの部分にさらに独自性をみせており、これまで未開発の空力性能を探究し続けているのは明らかだ。MP4-31では、後方側のウィッシュボーンアームを上から見ると、アッパーアームとロアアームの輪郭がほぼ重なり合っている。アッパーアームは通常よりも下に取り付けられており、ロアアームと協調して、気流を上や内側に逃がすのではなく、下に追いやり、サイドポット周辺に誘導することを狙っていると思われる。マクラーレン・ホンダは、テスト走行時にこのウィッシュボーンの後方側アームの上下に追加センサーを取り付けており、この部分からのデータを取得している。収集された数値を含む初期の実走実験データが取得された。これらのデータはCFDシステム、風洞、7ポスト・シェイカー・リグ等の実験施設において、運動学と空気力学の観点からシミュレーションを行い、収集されたデータと共に分析が行われる。