ランド・ノリス(マクラーレン)は、F1アブダビGP予選を2番手で終え、キャリア初タイトル獲得に王手をかけながらも「失望している」と率直な心境を明かした。自身のライバルとなるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が圧巻の走りでポールポジションを獲得し、ノリスは0.201秒届かず。3番手のオスカー・ピアストリには0.029秒差で競り勝った。
ノリスは現在ランキング首位で、決勝を3位以上でフィニッシュすれば無条件で初のワールドチャンピオンとなる。しかし、タイトル争いの中心であるフェルスタッペンの直後から決勝を迎えることに、複雑な感情を抱えている。2日間のフリー走行では絶好調を示したノリスだが、予選では一転して安定感を欠き、Q1・Q2から苦戦が続いた。最終的にはフロントロウ確保という結果を持ち帰ったものの、本人の胸中には明確な“悔しさ”が残ったままだ。予選の内容には満足、それでも「ポールじゃないから失望」ノリスは予選直後、パルクフェルメで次のように語った。「マックスは良い仕事をした。おめでとうと言うしかない。僕のラップはかなり良かったし満足している。でも最後の週末でポールに立てなかったことは失望だ。今日は僕たちに十分な速さがなかったので、明日やるしかない」その後の会見では、失望の理由をさらに踏み込んで説明した。「Q1とQ2はスムーズじゃなかったけれど、Q3のラップにはほとんど満足している。今日はかなり良い走りができたし、クルマから最大限を引き出せたと感じている。それでも十分じゃなかった。最終戦でポールに立ちたかったからね」「そして僕が前にいたい“ただ1人の相手”、その後ろにいる。失望の理由はそれだけ。ラップ自体には満足しているし、できる限りの走りだった」金曜からの落差と不安定な手応え「学べるものは少なかった」フリー走行ではフェルスタッペンとピアストリを圧倒し“本命”と見られていたノリスだが、予選に向けた改善が思うように進まなかったことも明かす。「金曜日の僕たちはベストな状態じゃなかった。改善した部分は多かったけど、学べるものは多くなかった。ロングランは良かったけれど、マックスのペースも強かった」Q1で2セット目のタイヤを使ったことが後半への影響になったのでは?という質問には、即座に首を振った。「いや、それは関係ない。原因はそこじゃない」タイトルが懸かる決勝へのアプローチは「まだ決めていない」タイトル決戦に向けた“攻めるか守るか”の戦略について、ノリスはまだ決めていないという。「正直、今の段階で決めるものじゃない。スタート前に決めるかもしれないし、5メートル先のターン1に飛び込む瞬間に決めるかもしれない。どちらの立場(追う側・追われる側)でもパフォーマンスは出せる」ラスベガスGPではフェルスタッペンの隣からスタートし、1コーナーでの判断ミスを悔いた経験があるだけに、危機管理への意識も高い。「“ハンター”でも“ハンテッド”でも構わない。普通は追われる側の方が有利だけどね。今の順位のままゴールしたいか?もちろんサインするよ。でも人生はそんなに簡単じゃない」「僕たちは明日どうやってレースに勝つかを考える。それがペースなのか戦略なのかは分からない。どういう形であれ、シーズンをトップで終えたいという気持ちは変わらない」ノリスはなぜ“失望した”のか──理由はただ一つノリスの失望の理由は、タイム差や予選順位そのものではない。“唯一前に出したくなかった相手”――マックス・フェルスタッペンに先行されたこと。その事実が、ノリスの胸に小さな棘として残り続けている。しかし、タイトルのかかる決勝ではノリスが圧倒的に有利な立場にあり、チャンピオンへの道は依然として広く開かれている。そして本人は迷いなくこう語る。「明日は勝ちに行く。それだけだ」