レーシングブルズのアイザック・ハジャーは、2025年シーズンのF1で最も評価を高めたルーキーだ。オランダGPでの3位表彰台をはじめ、堅実な走りと冷静な判断力でチームに貴重なポイントをもたらした。専門家の間では“最優秀新人”との声も強まっている。しかし、そんな高評価の中で、2026年に向けたレッドブル昇格をめぐる議論も熱を帯びている。元F1ドライバーのマーティン・ブランドルは「昇格はまだ早い」と警鐘を鳴らし、ハジャーのさらなる熟成を求めた。若き才能の成長をどう見極めるか──その判断はレッドブル陣営の未来を左右する。
ハジャーが示した“完成されたルーキー像”オランダGPで予選4番手を獲得したハジャーは、決勝でもその順位を守り切り3位表彰台を達成した。荒れたコンディションの中で冷静に状況を見極め、戦略を的確に遂行した姿は新人離れした落ち着きを見せた。アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)やニコ・ヒュルケンベルグ(ハースF1チーム)も初表彰台を飾ったが、戦闘力の劣るレーシングブルズでの3位は特筆すべき成果といえる。ブランドル「2026年昇格はリスク。もう1年が理想」スカイスポーツF1のマーティン・ブランドルは『The F1 Show』でこう語った。「もし規則が許すなら、レッドブルは1台体制にしてレーシングブルズに3人走らせたいほどだ。なぜなら、誰がマックス・フェルスタッペンの隣に座っても、彼の速さに圧倒されてしまうからだ」さらに2026年の体制についても慎重な見方を示した。「ユウキ(角田裕毅)は十分なチャンスを与えられてきたと思う。ただし来年はパワーユニットもシャシーも史上最大の変革期。そんな時期に新人を昇格させるのはリスクが大きい。ハジャーはもう1年レーシングブルズで経験を積むべきだ」データが裏づけるハジャーの安定性■ 2025年ハジャー vs ローソン比較(第20戦終了時点)・ポイント:ハジャー 39/ローソン 30・決勝最高位:ハジャー 3位/ローソン 6位・表彰台:ハジャー 1回/ローソン 0回・完走ポイント獲得:ハジャー 8回/ローソン 5回数字が示すのは、ルーキーとは思えない安定感だ。ミスを最小限に抑え、堅実にポイントを積み上げる姿勢はチームにとって理想的な存在といえる。焦らず積み重ねる1年が未来を変えるブランドルが強調したのは、若手昇格の“タイミング”だ。過去にもフェルスタッペンの隣で苦戦し、キャリアの流れを失った才能は少なくない。角田裕毅も今季、チーム戦略の影響で結果を伸ばせず、立場が揺れている。2026年はパワーユニットと車体規則の大転換期。その変化に挑むチームにとって、経験豊富なラインナップを維持することは極めて重要だ。ハジャーにとっても、もう1年レーシングブルズで経験を積むことが、長期的な成功への最短ルートとなるだろう。ブランドルの言葉を借りれば、「焦る必要はない」。ハジャーが2026年の主役になるために、今は熟成の時だ。