2025年F1第14戦ハンガリーGPの予選は、最後まで何が起こるか分からない混戦となった。週末を通して速さを見せていたマクラーレン勢を抑え、フェラーリのシャルル・ルクレールが見事な最終アタックを決めて今季初、通算27回目のポールポジションを獲得。変化する天候、タイヤ戦略、トラフィック、そしてラップタイミングの読み合い──すべてが絡み合う中で浮かび上がったのは、一瞬の集中力と決断力だった。ここでは、Q1からQ3までの全セッションを、無線や背景を交えて時系列で詳しく振り返る。
Q1:角田裕毅、好発進から一転、最終アタックで敗退気温29.5℃、路面温度48.5℃と高温の中で始まったQ1。セッション序盤は様子見ムードが漂うが、最初にコースインしたのはウィリアムズ勢。アレックス・アルボンは「グリップが全然ない!」と無線で苦しさを訴え、1分17秒台にとどまる。続いてレッドブル勢が動き、角田裕毅はソフトタイヤでの1回目のアタックでフェルスタッペンに続く2番手タイムを記録。「グッドラップ、いい滑り出しだ」とピットも好反応。だがこの時点で路面進化はすでに始まっていた。マクラーレン勢がタイムを刻み始めると、ピアストリは1分15秒554という圧巻のラップを叩き出しトップに立つ。続いてノリスが2番手、フェルスタッペンはやや遅れて9番手に。残り3分、トラックエボリューションが加速。ガブリエル・ボルトレトが5番手、サインツが7番手、ローソンが14番手と次々にジャンプアップ。セーフティゾーンは一気に押し上げられる。残り1分、ルクレールが5番手、ローソンが14番手に食い込み、角田は16番手に脱落。ファイナルアタック中の無線では「後ろのギャップが小さい、クリアじゃない」と苛立ちを見せたが、改善には至らず。そのままタイム更新できずにQ1敗退となった。Q1敗退者:16位:角田裕毅/17位:ガスリー/18位:オコン/19位:ヒュルケンベルグ/20位:アルボン角田裕毅、ハンガリー予選はQ1突破ならずQ2:ハミルトンとサインツ脱落、ローソンとボルトレトが台頭Q2開始時、気温はやや低下し、雲が空を覆い始める。ターン6付近では霧雨が確認され、観客もレインジャケットを着始める。「降り出すのか?」と不安の声が上がるなか、メルセデスは早期にジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリを送り出す。ラッセルはアントネッリを0.3秒上回る好タイムを出し、ピットからは「ナイスバンカー」と無線が入る。アロンソは新品ソフトで1分16秒025を記録し、「これはいいラップだ」と笑顔で報告。チームメイトのストロールも続くが、セッション途中でタイムが抹消される。一方、フェラーリのサインツは最後の1回に集中する戦略を選択。しかし、残り3分を切ってもピット出口に並ぶことができず、最後尾からのコースインに。「クリアラップが取れない!これじゃアタックにならない」と無線で苛立ちをあらわにする。ラストアタックに向けて一斉に飛び出す各車。ルクレールは5番手へとジャンプアップするが、ハミルトンは「セクター1がうまく決まらなかった」と無線で語る中、それでも一時7番手に浮上。だが後続のローソンが6番手タイムを叩き出したことで、ハミルトンは次々と順位を落とし、最終的に13番手でQ2敗退となった。さらにボルトレトが10番手に飛び込み、アントネッリを押し出す形に。サインツとフランコ・コラピントは最終アタックに懸けるも、どちらもタイムを伸ばせず敗退が確定。Q2敗退者:11位:アントネッリ/12位:ベアマン/13位:ハミルトン/14位:サインツ/15位:コラピントハミルトンはQ2敗退に「自分は役立たず」と落胆Q3:ルクレールが「一撃」決める!今季初&通算27回目のポールQ3開始時、気温は29℃台で安定していたが、風が徐々に強まり、路面温度も36.4℃にまで低下。各チームの戦略が分かれ、マクラーレンは新品ソフト、フェラーリやレッドブル勢は1回目に中古タイヤで様子を見る形となる。先にタイムを記録したのはノリス。1分15秒494と好タイムを出すが、ピアストリがその直後に1分15秒3台で上回り暫定ポールへ。ラッセルが3番手、アロンソが4番手で続く。ストロールは1回目のタイムがトラックリミット違反で抹消されるが、「まだチャンスはある」とピットから無線が入る。残り3分、すべてのドライバーが新品ソフトでファイナルアタックへ。トラックはこの日最も速い状態に近づいていた。ルクレールは最終グループでコースイン。セクター1は全体2番手、セクター2でパープルを刻むと、最終セクターでも完璧なラインをトレースしチェッカーを受ける。「これは最高のラップだった、全て出し切った」と無線で歓喜。その後にアタックしたピアストリとノリスもタイムを更新したが、ルクレールの1分15秒台には届かず。フェラーリは苦戦していたハンガロリンクで今季初ポールを獲得。ルクレールにとっては通算27回目のポールとなった。Q3結果(TOP10):1位:ルクレール2位:ピアストリ3位:ノリス4位:アロンソ5位:ラッセル6位:ローソン7位:ボルトレト8位:ハジャー9位:フェルスタッペン10位:ストロール(1回目のタイム抹消)ルクレールのサプライズポールにフェラーリ陣営は笑顔総括:流れを変えたルクレールの一撃、変化する天候を制すマクラーレンのワンツー独占が濃厚と見られていた予選だったが、ルクレールの一撃がすべてを覆した。気温と路面の変化、降雨の不安、トラフィック、そしてタイヤ戦略──あらゆる要素が入り混じったこのセッションを制したのは、最終局面で完璧なタイミングと集中力を発揮したルクレールだった。フェラーリにとっても、後半戦に向けた大きな弾みとなる1日となった。