2026年F1レギュレーションに対する不満を受け、FIAはマイアミGPからエネルギーマネジメントに関する重要な修正を導入する。スーパークリッピング時間の短縮や回生レートの引き上げなど、これまで問題視されてきた“奇妙な減速”や速度差の是正を狙った措置だ。しかし、この変更はすべてのメーカーにとって同じ意味を持つわけではない。特にパワーユニット性能に依存する回生領域では差が顕在化する可能性があり、ホンダにとってはむしろ不利が拡大するとの見方も出ている。
マイアミで導入される主な変更点スーパークリッピング(エネルギー回収)時間は1周あたり2〜4秒に短縮され、ピーク回生レートは250kWから350kWへと引き上げられる。また、バッテリー上限は8MJから7MJへ引き下げられた。これらの変更は、これまで問題視されてきたリフト・アンド・コーストの頻発や、速度差の拡大といった課題の軽減を目的としている。ホンダにとっての懸念点一方で、この「350kW回生」という変更がすべてのメーカーにとって有利とは限らない。ベテランジャーナリストのマーク・ヒューズは、Motor Sport Magazineのポッドキャストで次のように指摘している。「すべてはリアアクスルの逆トルク低減に関係していて、それが回生の速さを決める。だからホンダにとっては、さらに不利になる可能性がある」新レギュレーションではMGU-Hが廃止されており、回生とエネルギー制御の負担はMGU-Kに集中している。これにより、ターボラグ補填や出力制御も同時に担う必要がある。その中で、内燃エンジン(ICE)の性能が重要な鍵となる。ICE性能差が生む影響現在、ホンダのICEはメルセデス勢と比較して出力面で劣ると見られている。出力が低いエンジンは、回生に使えるエネルギーも限られる。その結果、350kWという高い回生レートに到達するまでに時間がかかる、あるいは維持できない可能性がある。つまり、同じバッテリー量を充電するために、より長いスーパークリッピング時間が必要となる可能性がある。これは本来「短縮」を狙った規則変更の意図と逆行する。勢力図への影響とメルセデス優位の可能性この変更は、結果として各メーカーに異なる影響を与える。メルセデスのように高出力ICEを持つ陣営は、350kWで効率的に回生できるため、短時間でバッテリーを充填できる。一方でホンダや、トルクに余裕のないメーカーは同じ恩恵を受けられない可能性がある。つまり、今回の調整は“中立的な修正”ではなく、勢力図を動かす要因になり得る。それでも一定の改善は期待されるただし、すべての変更が偏った影響をもたらすわけではない。バッテリー容量の削減(8MJ→7MJ)や、エネルギー展開制御の見直しは、メーカーを問わずリフト・アンド・コーストの減少に寄与する見込みだ。また、ブースト制限の調整も、鈴鹿でのオリバー・ベアマンのクラッシュのような危険な速度差の抑制を狙ったものだ。結果として、今回の規則変更は一定の改善をもたらしつつも、その中核である「回生レート引き上げ」は、チーム間の格差を広げる可能性を孕んでいる。実際の影響は、マイアミでの走行を経て初めて明らかになることになる。