今シーズン、F1の表彰台の常連になってきたホンダ。マネージングディレクター(MD) としてF1で闘う山本雅史が Honda Magazine の直撃インタビューに答えた。(このインタビューは7月1日オーストリアGPで、2015年復帰後初優勝の直前にしたものです)「まずはHondaオーナーのみなさん、応援ありがとうございます。今年は結果が出てきました。開幕戦から表彰台に上がれ......狙い通りでしたが、嬉しかったですね」と山本雅史はインタビューを始めた。
レッドブルとのタッグが好結果に。ここは狙い通りですか?昔はエンジンパワーがすごいとか、ドライバーの腕がずば抜けているとか、それで勝つことも可能でした。が、今のF1には総合力が必要。大きく4つ。チーム全体のマネージメント力、ドライバーのスキル、そして車体、パワーユニット。この4つの総合的なバランスが優れていないと勝てないんです。勝ちにいきたいHondaとして、勝つためのレースができ、総合力が高まるチームはどこか?と。それがレッドブルという選択でした。実は背景としては、ラブコールはこちらからではなく、最初はレッドブル側からあったんです。どういう点がレッドブルは優れているのですか?まず、ミスをしない。もしミスをしてもチーム一人ひとりの意識が高いからリカバリーできる。そしてレース中の変化にすぐ対応できる。レースは、現場でどうジャッジするか、指揮官の采配で決まります。他チームの戦略、天気の変化、セーフティーカーが入る、などなど予想通りにいかないことが次々に起こる。それに対応すべく何パターンもの戦略を持ち、現場で瞬時に即断即決のジャッジをする。そのコントロール力が高いのが、レッドブルとメルセデスとフェラーリだと思います。ミスしない強さは、どこから生まれるんでしょうか? ビジネスマンの参考にもなりそうです。ファクトリーに行った時に感じたことは、トップと現場が近いってこと。部屋の密度感がいいし、いい距離感があって、もちろんリーダーをリスペクトしているんですが、フランクなんです。そして、俺ら絶対やるぜ! みたいな パワーとベクトルが揃っていると感じて、レッドブルに行った時、ここだよ! って思いましたね。一方、昨年から組んでいるトロロッソの方は?昨年からトロロッソと組んだことが今年レッドブルと組むことにつながったんです。もちろん、トロロッソ代表のフランツ・トストと何回も話しました。彼は「Hondaもトロロッソも共に成長していかなければならない。レッドブルと組んだ方がHondaは勝利に近くなる。僕らもバックアップするから」、そう言ってくれました。2チーム体制が今、良い相乗効果を生んでいます。トロロッソも確実に強くなってきています。山本さんはメカニックではないのですが、F1現場ではどういう役目を?コミュニケーションですね(笑顔)。レースではマッチングがすごく大事。チーム代表、エンジニア、ドライバー、メカニック......多くの役者がどう組み合うのか、そのマッチングが重要。そこを円滑にいくように。またF1ファンやHondaファンに喜んでいただける企画を考えることも重要ですしね。舞台監督のようなものですね! ところでチーム名に「アストンマーティン」とありますが、マズくないんですか?もともとアストンマーティンは、レッドブルレーシングチームの冠スポンサーなんです。議論はありましたけど......同じクルマメーカーであっても、Hondaとアストンマーティンでは車種構成が異なることで、それほど気にすることはないかと思いまして。アストンマーティンも喜んで受け入れてくれましたしね。Hondaのパワーユニットも確実に進化を遂げていますね。Sakuraの開発リーダー浅木が判断よく、いい結果に。イエス、ノーをはっきりして、いろいろなことをダラダラやらないんですね。人間、明かりがないところに走らされても、やんなっちゃう。こっちに光があるから進めっていうのが、浅木のやり方。すごいと思っています。浅木は初代N-BOXの開発責任者ですが、F1でも結果を出してくれる。まさにHondaらしい開発者です。F1で勝つ意味、Hondaが勝ちにこだわる理由は?そんなに簡単に世界一の技術は手に入らない。人が育つことが重要。人が育つということがやはりHondaの大きな財産。それから、やっぱり勝つことで、世の中に広がりを生む。どんなスポーツでも、日本人が世界の頂点で闘えば、みんなが嬉しくなるじゃないですか。テレビや新聞やネットに嬉しいニュースが溢れ、喜びが広がる。だからやっぱりHondaは勝ちにこだわりたい......私はそう思っています。ズバリ、表彰台の真ん中に立てそうですか?チャンスは十分あります。期待していてください。最後に。なぜ、山本さんはそこまでレースの世界に入り込めるんですか?和光研究所でデザイン開発をやっていて、その後は栃木研究所で技術広報に。その後モータースポーツの世界に入り、そしてF1の世界に。正直、孤独な時もあるし、考えて考えて苦しい時もありますが、でもやっぱり「勝ちたい」。だって勝ってみんなで喜びたいじゃないですか。その想いや情熱が自分を夢中にさせてくれているのかなって思います。そしてHondaという会社に入って良かったなって......ちょっと良く言い過ぎました(笑)。
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