ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治は、F1フランスGPで導入する“スペック3”エンジンはベンチデータではパワーの増加が示されているとしつつも、まだメルセデスとフェラーリに追いつけるだけのパフォーマンスレベルには至っていないと考えている。ホンダは、レッドブルと“スペック3”エンジンの投入のタイミングを協議してきたが、今週末のF1フランスGPでレッドブルの2台とトロロッソ・ホンダのダニール・クビアトに投入することを決定した。
今回はパフォーマンスの向上を図るためにICEとターボのアップデートを行っている。F1フランスGPは、レッドブルのホームレースであるオーストリアGPとの連戦で開催されるため、投入のタイミグとして最適なものとなっている。「我々のテストベンチのデータでは以前のバージョンのPU(パワーユニット)よりもパワーの増加が示されています」と田辺豊治はコメント。「ですが、今回のアップデートではまだ上位のPUマニュファクチャラーに追いつくだけのパフォーマンスレベルには至っていないと考えていますので、引き続きホンダとして総力を挙げて開発を続けていきます」そのため、ホンダとして各開発部門の垣根を超えて総力を挙げてPUの開発を続けていくと田辺豊治は語る。一例として昨年のPU開発でホンダジェットの開発を担当する航空エンジン研究開発部門との協力体制でMGU-Hのアップデートを行ったと説明。今回のターボチャージャーのアップデートでも同部門と連携して空力設計を行ったという。「現在、F1のPU開発においては、更なる競争力向上を目指し、ホンダのさまざまな開発部門との間で連携を深める事を進めています」と田辺豊治はコメント。「特にレース部門との技術的な共通点が多く見られる、航空エンジン研究開発部門との関係を強化し、昨シーズン途中に行ったMGU-Hのアップデート時には、同部門の支援をもとにした技術を適用、信頼性を大幅に向上させました」「今回のターボーチャージャーのアップデートでは、これまでIHIと取り組んできたターボにおける空力設計の分野でも、航空エンジン開発部門が有する知見と技術を反映しています」ちなみにIHIは、昨年11月にホンダと技術契約を締結。IHIは、F1でのターボチャージャーの使用が認められていた1984~1988年において、エンジン出力向上の核となるターボチャージャーをホンダに供給し、第2期ホンダ F1レース活動を共に戦い1988年には16戦15勝の輝かしい成績を残した。これらの実績等が評価され、IHIは再びホンダのF1レース車両用パワーユニット向けにターボチャージャーの供給している。IHIは、テクニカルパートナーとして、F1レース車両用パワーユニットのターボチャージャー開発において、HRD Sakuraと共にコンセプト段階から検討・評価を進め、パワーユニットが最高のパフォーマンスを発揮できるようIHIの持つエンジニアリング力を駆使して、ターボチャージャーの開発に協力している。
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