ホンダは、2019年のF1世界選手権で復帰後5シーズン目を迎える。今年、ホンダはレッドブル・レーシングとトロロッソにF1パワーユニットを供給。2015年のF1復帰後初めて2チームにF1エンジンを供給する。2008年にF1から撤退したホンダは、2013年5月におよそ2年後の2015年からマクラーレンのワークスパートナーとしてF1に復帰することを発表。初年度となる2015年は大きな苦戦を強いられることになるわけだが、その予兆は2014年末のアブダビテストで出ていた。
2014年、マクラーレン・ホンダは、マクラーレンの2014年F1マシンMP4-24にホンダのパワーユニットを搭載した開発車両「MP4-29H」を用意。シェイクダウンを済ませ、シーズン終了直後にヤス・マリーナ・サーキットで行われたピレリのタイヤテストにMP4-24Hで参加。メルセデスに代わってホンダのステッカーが貼られたマシンは大きな注目を浴びた。走行は当時テストドライバーだったストフェル・バンドーンが担当。しかし、初日は電気系の問題と燃料交換の問題で3周しか走れず、2日目は2周目にさらなるメカニカルトラブルが発生。そのままガレージを出ることはなく、2日間の走行でたった5周しか走行することができなかった。だが、2014年にF1パワーユニットが導入された際のルノー、そして、フェラーリにもわずかにトラブルが発生したため、その時点でホンダの問題はそれほど深刻なものとは見なされなかった。それよりも、新しいパートナーシップで早期に走行をスタートさせ、データを収集する機会をもてたことはポジティブに捉えられた。当時、ホンダのF1プロジェクト総責任差を務めていた新井康久は「基本的に全てが正しく機能しているとわかったのはポジティブです。エネルギー回生は機能しています。思い通りにいかなかったのは電気系でした。しかし、エンジン自体は良いと思っています」とコメント。だが、プレシーズンテスト、シーズン開幕を経てもホンダのF1エンジンの信頼性とパフォーマンス不足は解消されず、2015年にマクラーレンはチーム史上最悪となるコンストラクターズ選手権9位でシーズンを終了。特にエネルギー回生の“デプロイメント”が弱点となった。翌年はパフォーマンスが上向いて6位まで順位を挙げたものの、ホンダは当時のコンセプトのパフォーマンスに限界を感じてエンジン設計を完全に見直した2017年は再びプレシーズンテストからトラブルが多発。これに端を発してマクラーレンとホンダはパートナーシップを解消。2015年と同じランキング9位でシーズンを終えた。2018年、ホンダはトロロッソとのパートナーシップを開始。姉妹チームのグリッド降格ペナルティを気にしないレッドブルの寛大なポリシーによって新しい開発パーツの投入を続け、最終的にルノーを上回ったと評されるまでパフォーマンスを改善。レッドブル・レーシングとの契約に至った。2019年のホンダのF1パワーユニットは、2017年に導入したコンセプトを継続。新たに“パーティモード”が備えられるとされているが、コンセプト初年度となった2015年や2017年に見舞われたトラブル多発のプレシーズンテストは回避できると期待されている。