ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、2021年の新しいF1レギュレーションに言及。ホンダとしてMGU-Hは存続してほしいと考えていることを明らかにした。F1の新オーナーであるリバティメディアは、パワーユニットメーカーとして自動車メーカーがF1に新規参入することを促進するために、F1エンジンを安価でシンプルにしたものにしたいと考えており、特にMGU-Hの廃止を希望している。
しかし、4月初めにリバティメディアが発表した2021年以降のF1の将来についての計画では、エンジンは5つの核となる要素に含まれていたものの、フェラーリやメルセデスが難色を示していたMGU-Hの廃止は省かれていた。ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治も、MGU-Hは市販車の関連性のあるテクノロジーであり、今後も存続することを願っているとのホンダのスタンスを語った。「MGU-Hはあってほしいです。我々はまだ2021年の全てを決定したわけではないと思っています。我々はFIAの方向性を尊重していますし、他のマニュファクチャラーの方向性も尊重しますが、MGU-Hはあってほしいと考えています。将来のテクノロジーの最高峰であり、市販車にも関連性がありますからね。我々としては存続してほしいです」「詳細に関しては明らかにしていかなければならないことがたくさんあると思います。我々は全体的な要約は把握していますが、詳細は持っていません。そこはクリアにしていかなければならない部分ですし、議論中です。多くのアイデアを考えています」F1の市販車との関連性について田辺豊治は「ハードウェア自体は市販車部門に直接的な移行はないと思います。エネルギーマネジメント自体は開発を続けたいと思っていますし、多くのことを学ぶことができます。そのテクノロジーは移行できると思います」とコメント。「エネルギーマネジメントもシステムをコントロールしています。改善することはできますし、我々の市販車部門にも役立ちます。我々は市販車部門に協力できると思っています。そのエリアに取り組み続けることは我々にとって技術的なチャレンジです。我々にとっても重要なことだと言えます」ホンダは、2019年からのF1パワーユニット供給についてレッドブル・レーシングと交渉を行っている。田辺豊治は、契約については自身の役割ではないが、交渉は続けられていると語る。「テクニカルディレクターとしての私の役割は、契約案系にはあまり関与してませんが、ホンダとして我々は学び、議論していますし、バクーでは予備的な会話をしています、まだ議論中です」とコメント。また、契約締結の時期については「FIAのレギュレーションに従いますが、現時点では正確にはお話しできません」と語るにとどめた。MGU-HとはMGU-Hは、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換する。通常、エンジンの燃焼室を出た高温の排気は、排気管を通じて大気に放出される。この熱エネルギーを再利用するために、専用のモーター/ジェネレーターユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システム。このユニットは、MGU-Hと呼ばれている。MGU-Hの「H」は、Heatの略で「熱」(排熱エネルギー)を意味している。ターボ車の場合、減速を終えて次に加速しようとアクセルを踏んでも、排ガスの流量が増えてタービンが本来の性能を発揮するのに一定の時間を要してしまう(ターボラグ)。そこで、MGU-Hを利用してコンプレッサーを回転させ、タービンが排気の到達を待たずに機能させることで、ターボラグの解消を行っている。全開加速時は、タービンに供給される排気エネルギーが増えるため、エンジンが必要な空気を圧縮するためのコンプレッサーの仕事を上回る場合がある。その際、使いきれなかった排気エネルギーによってMGU-Hで発電し、その電力を、直接MGU-Kに送る。MGU-Hでの発電量は制限されておらず、バッテリーの充放電エネルギー制限に縛られることなく、エンジンにMGU-Kの出力を上乗せして走ることができる。言い換えれば、余った排気エネルギーを、効率良く加速に使うことができる。コーナー出口の全開加速では、MGU-Hからだけでなく、バッテリーからもMGU-Kに電力を供給する場合がある。こうすることで、MGU-Kをレギュレーションで決められた最大出力(120kW)で駆動し、フル加速することができる。