ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、2018年のF1第2戦バーレーンGPにむけての作業を説明。開幕戦でのMGU-Hのトラブルの影響でピエール・ガスリーのICE(エンジン)にもダメージが及んでいたことを明らかにした。開幕戦を20番手スタートのピエール・ガスリーは、好スタートを見せて1周目に17番手までポジションアップすると、レース序盤でさらに順位を上げて16番手につけていた。しかし、14周目に、突如スロー走行となってピットへ戻り、MGU-H関連のトラブルによりリタイアとなった。
ホンダF1は、ピエール・ガスリーのF1パワーユニットをHRDさくらで調査。ダメージはICEにも及んでおり、2戦目にして早くもMGU-H、ターボ、そして、ICEを投入することを明らかにした。また、対策を施したMGU-Hとターボは万全を期してブレンドン・ハートレーにも投入される。2018年のF1世界選手権では、ドライバーが年間に使用できるICE、ターボチャージャー、MGU-Hは3基までとなり、MGU-K、コントロールエレクトロニクス、エネルギーストアは2基に削減。それ以降はペナルティが科せられることになり、トロロッソ・ホンダの両ドライバーは早くもハンデを背負うことになった。「非常に厳しい結果に終わった開幕戦を経て、チームは第2戦の開催地、バーレーンに向かいます。メルボルンでは、レース中にガスリー選手のパワーユニットのMGU-Hにトラブルが発生し、その影響でICEにもダメージを受けました。そのため、今回のバーレーンGPにはMGU-Hとターボ、ICEを交換して臨みます。MGU-Hとターボは、オーストラリアで抱えたトラブルの解析を行い、対策を施したものを投入する予定です」と田辺豊治はコメント。「解析結果を踏まえ、万全を期すため、今回はハートレー選手にもガスリー選手と同じMGU-Hとターボの投入を決定しました。年間で使用可能なPUが3基に制限されている中、2戦目で2基目のコンポーネントを投入することは非常に重い決断です。この先、同じことを繰り返すことが無いように開発を続けます」「開幕までは非常にいい流れで来ていただけに、チームやファンの期待を裏切るような結果になったことはとても残念に思っています。ここ、バーレーン・インターナショナル・サーキットはPUにとってタフな環境ですが、一歩一歩、進化を見せられるよう、まずは目の前の戦いに挑みます」MGU-HとはMGU-Hは、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換する。通常、エンジンの燃焼室を出た高温の排気は、排気管を通じて大気に放出される。この熱エネルギーを再利用するために、専用のモーター/ジェネレーターユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システム。このユニットは、MGU-Hと呼ばれている。MGU-Hの「H」は、Heatの略で「熱」(排熱エネルギー)を意味している。ターボ車の場合、減速を終えて次に加速しようとアクセルを踏んでも、排ガスの流量が増えてタービンが本来の性能を発揮するのに一定の時間を要してしまう(ターボラグ)。そこで、MGU-Hを利用してコンプレッサーを回転させ、タービンが排気の到達を待たずに機能させることで、ターボラグの解消を行っている。全開加速時は、タービンに供給される排気エネルギーが増えるため、エンジンが必要な空気を圧縮するためのコンプレッサーの仕事を上回る場合がある。その際、使いきれなかった排気エネルギーによってMGU-Hで発電し、その電力を、直接MGU-Kに送る。MGU-Hでの発電量は制限されておらず、バッテリーの充放電エネルギー制限に縛られることなく、エンジンにMGU-Kの出力を上乗せして走ることができる。言い換えれば、余った排気エネルギーを、効率良く加速に使うことができる。コーナー出口の全開加速では、MGU-Hからだけでなく、バッテリーからもMGU-Kに電力を供給する場合がある。こうすることで、MGU-Kをレギュレーションで決められた最大出力(120kW)で駆動し、フル加速することができる。