ホンダは、2018年F1シーズンから年間で使用できるエンジン数を3基に削減するという新しい制限は“不合理”であり、メルセデスやフェラーリの優位性を守ることになると考えている。2017年は、各F1ドライバーが使用できるパワーユニットコンポーネントは4基だったが、パワーユニットに関連するだけで合計で740グリッドの降格ペナルティが発生した。
2018年からはF1カレンダーが21戦に拡大されるにも関わらず、ドライバーが年間に使用できるF1エンジン、ターボチャージャー、MGU-Hは3基までとなり、MGU-K、コントロールエレクトロニクス、エネルギーストアは年間2基しか使えなくなる。レッドブル・レーシングのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、2017年にいくつかのエンジンメーカーが4基でも苦戦していたにも関わらず、パワーユニットの使用数を削減するのは“頭がいかれている”と語っている。しかし、全チームの一致がなければルール変更を食い止めることはできない。前回のストラテジーグループの会議でフェラーリのセルジオ・マルキオンネ会長が廃止案をあっさりと片付け、今シーズンからの導入が確定している。FIA会長のジャン・トッドも、2017年のエンジンペナルティの多発には不満を感じてはいるものの、全会一致でなければ、3基のエンジン制限をストップすることはできないと強調している。昨シーズンまでホンダのF1プロジェクト総責任者を務めていた長谷川祐介は、新たな制限は逆効果だと考えており、シーズン中の改善が制限されることでパフォーマンスにも影響が出てくると考えている。「とても厳しいです」と長谷川祐介はコメント。「我々だけでなく、ルノーも困難を抱えてきました。妥当なことだとは思いません。技術的な観点から見て、あまりに難しいと思います」「エンジンパフォーマンスをセーブすれば達成するのは簡単だと思います。2000rpmを下回れば、レースをフィニッシュすることはできますが、もちろんそんなことをしても意味はありません」新しい制限が、現在のメルセデスとフェラーリの優位性を守ることになるかと質問された長谷川祐介は「結果的にそうですね」とコメント。「我々は何度も話し合いを重ねてしましたが、彼は強く反対しました。3基のエンジンでは、新しいエンジンを導入するチャンスは2回しかないということになります。我々は開幕時に優れたエンジンを導入する必要がありますが、それが出来なかった場合、新しいエンジンを導入するチャンスは2回しかありません」また、長谷川祐介は、エンジンメーカーの開発能力を制限することは、F1内外の両方の企業にとってF1の魅力を低下させることになると警告する。「コスト削減は重要なことです。ですが、F1は技術的なチャレンジです。我々がより良い何かを証明できないのであれば、F1に留まる意味はありません」ホンダのF1パワーユニットは、2017年の終盤戦では信頼性を向上させたが、制限によってパフォーマンスに取り掛かる前に信頼性を一番の焦点とせざるを得ないと認める。「我々はエンジンを7レース走らせるために信頼性に専念する必要があるます。ですが、我々はパフォーマンスも改善させる必要があります。ベースラインは優れています。我々は現在のエンジンをOKであることを確認する必要があります。確認が取れ次第、次のステップに進んでいきます」ホンダは、昨シーズン限りでマクラーレンとのパートナーシップを解消し、2018年からトロ・ロッソにF1パワーユニットを供給する。2018年にむけてホンダはF1の運営体制を変更。長谷川祐介が務めたF1プロジェクト総責任者のポジションは配置され、現場の指揮に専念するテクニカル・ディレクターを設置し、田辺豊治が就任。さくらでのエンジン開発は浅木泰昭が指揮をとる。