フェラーリのルイス・ハミルトンは、2025年F1アメリカGP決勝で4位フィニッシュを果たした。表面上は堅実なリザルトだが、その裏ではマシン特性が再び彼の足かせとなっていた。フェラーリSF-25の“プランク摩耗問題”が再燃し、チームは無線で繰り返し「リフト・アンド・コースト(LiCo)」の指示を出していた。レース序盤、ハミルトンはジョージ・ラッセルをかわして4番手に浮上。だが、その直後から「ターン1と2の進入で50メートルのLiCoを実施」という指示が無線で飛ぶ。
これはマシンがストレートエンドで路面に擦れ、スキッドブロックを削りすぎることを防ぐための処置だ。フェラーリは中国GPでの失格(プランク摩耗過多)以降、マシンを低く走らせることに慎重になっており、LiCoは事実上の安全策だった。しかし、この指示によってハミルトンは本来のレースペースを発揮できず、マクラーレン勢やチームメイトのシャルル・ルクレールとの差が広がっていった。終盤、燃料が軽くなり通常なら制限が緩むはずの状況でも、逆にLiCo距離が「さらに50メートル追加」と伝えられ、ターン12でも減速指示が出た。結果的に、フェラーリは4位という好成績を得ながらも、ハミルトンのポテンシャルを制限していたことが明らかになった。ハミルトン「いい結果だ。でも、まだ満足はしていない」ハミルトンは5番手スタートから順位を上げ、フェラーリ移籍後の自己最高位タイとなる4位でフィニッシュ。レース後、『Sky Sports』に次のように語った。「いい結果だし、チームにとっても素晴らしい。3位と4位で多くのポイントを取れた。スタートは悪かったけど、その後は前に出られたし、ポジティブな点はたくさんある」「もちろん、もっと上を狙いたい。だからこれからも努力を続ける。アップグレードをしていない中でこれだけ戦えたのは、チームが素晴らしい仕事をしている証拠だ。ファクトリーのみんなも誇りに思っていいと思う。僕たちは正しい方向に進んでいる。あと少しで表彰台だけど、あきらめずに挑み続けるよ」この結果により、ハミルトンは今季獲得ポイントを142に伸ばし、フェラーリ加入初年度の終盤戦でも確かな進歩を示している。フェラーリの「安全策」が速さを封じるSF-25は「低車高で速いが、底打ちに弱い」という設計上の宿命を抱えており、中国GPでの失格以降、チームはマシンの底部保護に過敏になっている。COTAでは路面のうねりが激しく、LiCo(リフト・アンド・コースト)の実施は避けられなかった。つまりフェラーリは、ハミルトンの攻めの走りを犠牲にしてでも完走と信頼性を優先した。結果は「最良の安全策」ではあったが、タイトル争いの上位陣と戦うには、この構造的制約を解消する必要がある。アメリカGPでの4位は、ハミルトンが持つポテンシャルの上限ではなく、あくまで“チームが許した範囲内での最善”の結果だった。