ルイス・ハミルトンのメルセデスF1との契約にはいわゆる“ノン・ポーチング(不正な引き抜きを禁止)”条項があり、フェラーリに重要な人材を移籍させることはできない。今月、ハミルトンは、2024年シーズン終了後にメルセデスを離れ、2025年からシャルル・ルクレールのパートナーとしてフェラーリと複数年契約を結ぶというニュースでF1界を驚かせた。
このニュースは、ハミルトンの長年のレースエンジニアであるピーター・ボニントンが、7度のワールドチャンピオンに続いてイタリアに渡るのではないかという憶測を呼び、チーム代表のトト・ヴォルフは、この話題が「今後数カ月の間に誰もが行う必要がある議論」であることを示唆した。ドライバーがチームを移籍する際にエンジニアやその他の上級技術者を連れて行くことは珍しいことではなく、1996年にミハエル・シューマッハがベネトンの主要エンジニアであるロス・ブラウンとロリー・ブラインをフェラーリに連れて行ったことは有名である。しかし、昨年夏にハミルトンが結んだ2年契約には、エンジニアの離脱を防ぐためのいわゆる“ノン・ポーチング”条項が加えられていることを、チームの広報担当者が『RacingNews365』に認めた。正式には“ノン・ソリシテイション(非誘引)”条項と呼ばれるもので、ハミルトンはボニントンを含め、いかなるチームメンバーにもフェラーリへの移籍を勧誘することはできない。2013年にハミルトンがメルセデスに移籍して以来、ボニントンはハミルトンをチームでの82勝のうち81勝に導き、6度のタイトル獲得に貢献した。“ボノ”の愛称で呼ばれる彼の声は『ハンマータイムだ』と『ルイス、頑張れ!』という呼びかけにより、すべてのレースエンジニアの中で最も有名なものの1つとなっており、ボニントンがメルセデスでの勝利を見逃したのは2019年メキシコGPのみで、ハミルトンが3位に終わった2022年オーストリアGPも欠場している。