フェラーリが開発した革新的なリアウイング「マカレナ」が、2026年F1マイアミGPのパドックで大きな注目を集めている。極端な可動域を持つこのコンセプトは、すでに複数チームが関心を示し、レッドブルなども類似のアイデアを検討・テストしているとみられる。しかし、すべてのチームがこの流れに乗るわけではない。ハースF1チームは、この“マカレナ”コンセプトに対して明確に距離を置く姿勢を示しており、その判断はリソース配分と開発効率という観点に基づくものだ。
270度回転という極端なコンセプトフェラーリの“マカレナ”リアウイングは、従来の可変リアウイングとは一線を画す構造を持つ。通常は約90度程度の可動に留まるところ、このシステムでは上部エレメントが最大で270度近くまで回転し、ストレートでは空力プロファイルそのものを大きく変化させる。これにより抗力を大幅に削減し、最高速の向上が期待される一方で、構造的な負荷は大きく、信頼性確保や制御の複雑さという課題も抱える。単なるドラッグ低減デバイスではなく、マシン全体の設計思想に関わる高度なシステムだ。ハースが採用しない明確な理由このコンセプトについて、ハースの空力部門責任者であるダビデ・パガネッリは、導入の可能性を問われ次のように説明した。「これは興味深いコンセプトだが、同時に非常に複雑でもある。現時点では、投入するリソースに対してより即効性のあるリターンが見込める開発に集中したいと考えている。マシンの複雑性やコストの観点からも、優先順位はそこではない」この発言が示すのは、単なる技術的評価ではなく、チーム全体の開発戦略そのものだ。リソース配分が分ける開発戦略ハースF1チームは、トップチームと比較して限られたリソースの中で戦う必要がある。そのため、開発においては“最大効率”が最優先となり、コストに対して確実なパフォーマンス向上が見込める領域に集中する傾向が強い。一方でフェラーリのようなチームは、リスクを取ってでもブレークスルーを狙う開発が可能であり、その差が今回の判断の分岐点となっている。極端なコンセプトは成功すれば大きな優位性を生むが、同時に開発コストと失敗リスクも跳ね上がる。結果として、“マカレナ”リアウイングは今後の開発競争における分岐点のひとつとなりつつあるが、すべてのチームが同じ方向に進むわけではない。ハースの選択は、その現実的な立ち位置と戦略を端的に示している。