ハースF1チームは、アメリカGPで新型フロアを導入した。目的はマシンのバランスとグリップの向上、そしてセットアップの自由度を広げることにある。2026年の大幅なレギュレーション変更を前に、多くのチームが開発リソースを新時代のマシンに振り向けている。しかしハースは現行マシンの改良を続けており、コンストラクターズ選手権8位の座を狙っている。サウバーとの差はわずか9ポイントだ。
小松礼雄代表「ドライバビリティと安定性、両面で改善」今週末のサーキット・オブ・ジ・アメリカズでは、エステバン・オコンがフリー走行で新型フロアをテストし、結果次第でスプリント予選に向けて両車に採用するかどうかが決定される。英オートスポーツ誌に対し、小松礼雄代表は次のように語った。「両方です。全体的なパフォーマンスとドライバビリティ、安定性の両面を改善しています。より予測しやすいパッケージはドライバーに自信を与え、それがドライバビリティの向上につながります」「シルバーストンで導入した新型フロアの方向性は、我々がどのように開発を進めるべきかを示してくれました。今回のアップグレードはその延長線上にあります。より一貫性があり、予測しやすいマシンになっているはずです」「このアップグレードによってセットアップの幅も広がるでしょう。これまでは特定の方向にしか調整できない制限がありましたが、それが改善されるはずです」オコン「バランスとグリップが改善されることを期待」ここ5戦でわずか1ポイントの獲得にとどまるオコンは、新パッケージに期待を寄せた。「バランスが必要な箇所で少しでも改善してくれればいいと思う。シルバーストンでアップグレードを入れたときはポジティブな方向に進んだし、今回もさらに一歩進めることを期待している。少しでも多くのグリップが得られればうれしいね」「パフォーマンスを引き出して、もっと頻繁にポイントを取れるようになりたい。ポイントを取らなければいけないのは確かだ」新人ベアマンの対応にも自信「スパでの変更のほうが大きかった」スプリント週末のためフリー走行は1回のみだが、小松代表は新人オリバー・ベアマンにも問題はないと自信を示した。「大丈夫だと思います。以前にももっと大きな変更を経験していますから。例えばスパのスプリント週末では、FP1から予選にかけてエステバンのマシンをハイダウンフォースからローダウンフォースに変えましたが、そのほうが今回よりもずっと大きな変更でした」「今回開発した特性が正しければ、つまり両ドライバーが求めている安定性やコーナー中のバランスが一致していれば、FP1後にエステバンのフィードバックがポジティブであれば、オリーのマシンでも同様の効果があるはずです」「我々は開発できるチーム」──ハースの成長を示す試金石小松礼雄は、ハースがシーズン中にマシンを継続的に開発できるチームであることを証明したいと強調した。過去2シーズンは7月以降の得点率がわずか8%にとどまっていたが、2024年にはサマーブレイク後に31ポイントを獲得。今季もすでに11ポイントを積み上げている。「今回のアップグレードがうまくいけば、本当にうれしいです」と小松代表。「2年連続で『ハースは開発できない』と言われてきましたが、昨年それを覆し、今年も同じメンバーが2年連続で開発を成功させました。それはチーム全体に大きな自信を与えています」分析:ライバルが2026年型へ移行する中での“現行型強化”戦略今回のフロアアップグレードは、ハースが“2025年型マシンを戦わせ続ける意志”を示す象徴的な一手だ。ライバルチームがすでに2026年レギュレーション対応の開発にリソースを移すなかで、ハースは現行マシンの熟成を選んだ。これはコンストラクターズ8位という現実的な目標を見据えた、戦略的な判断でもある。小松体制2年目となる今季、ハースはシーズン後半でも安定してアップデートを投入し、前年の“開発停止”のイメージを払拭しつつある。開発継続による学習サイクルを保ちながら、現行パッケージの限界を押し広げていく姿勢は、チームの成熟と自信の表れだ。“開発できるチーム”という自負を裏づけるためにも、このアメリカGPでの新型フロアの成果は重要な意味を持つ。ライバルが未来へ舵を切る中、ハースは現在を磨く。その戦略の正しさが、今週末で問われる。
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