フォーミュラEとFIA(国際自動車連盟)は、新世代レースカー「GEN4」を正式発表した。2026/27年シーズン(シーズン13)からの投入が予定されており、シリーズ史上最速・最高出力を誇るマシンとして、新たなパフォーマンス、革新性、そして持続可能性の基準を打ち立てることになる。新型GEN4は最高出力600kW(約815馬力)を発揮し、レースのすべてのフェーズでアクティブAWD(全輪駆動)を採用。テクニカルな操縦性が求められる“最もチャレンジングなフォーミュラEカー”として設計されており、接近戦とスリリングなオーバーテイクを前...
空力面でも予選用の「ハイダウンフォース仕様」と、決勝レースに最適化された「ローダウンフォース仕様」の2種類が用意され、状況に応じたセットアップが可能になる。さらに、GEN4はモータースポーツ史上もっとも持続可能なマシンとして位置づけられる。構造素材の100%がリサイクル可能であり、そのうち20%は再生素材を使用。バッテリー、ボディワーク、タイヤなど、すべてのサプライチェーンで倫理的調達と環境負荷低減を重視している。フォーミュラEが掲げる「世界で最もサステナブルなモータースポーツ」としての地位をさらに強化する狙いだ。GEN4の主な技術仕様と進化点■ 空力設計予選向け「ハイダウンフォース」仕様と、決勝用「ローダウンフォース」仕様の2パッケージを設定。各セッションの目的に応じた最適化が可能。■ パフォーマンス/テクノロジー・ピーク出力:450kW(レースモード)/600kW(ATTACK MODE時)・最大回生ブレーキ出力:700kW・エネルギー容量:55kWh・アクティブAWDおよびアクティブディファレンシャル搭載■ サステナビリティ100%リサイクル可能な素材で構成(20%以上はリサイクル素材由来)。製造・調達過程すべてで環境負荷を最小化。メーカーによる開発とデビュー計画GEN4は今後、フォーミュラEの登録メーカーであるポルシェ、日産、ステランティス、ジャガー、ローラ・カーズによって開発プログラムに入る。それぞれのメーカーは自社のパワートレイン技術とエネルギーマネジメントの知見を投入し、性能限界を探るテストを実施。2026/27シーズン開幕戦での正式デビューを目指す。マレク・ナワレツキ(FIA サーキットスポーツ・ディレクター)「GEN4は電動技術の新たな可能性を示すものであり、フォーミュラEが2014年の創設以来どれほど進化したかを体現している。FIAとフォーミュラEの共同開発により、これまで以上にOEMがロードカー技術を反映できる枠組みを提供することができた。」ジェフ・ドッズ(フォーミュラE CEO)「GEN4は単なるレーシングカーではない。10年以上にわたる革新と挑戦の結晶だ。最高のパフォーマンスと環境責任を両立し、フォーミュラEを“未来志向のスポーツ”として確立させる存在になる。」アルベルト・ロンゴ(フォーミュラE共同創設者/CCO)「GEN4は“次世代のパイオニア”たちのために設計された。600kWとアクティブAWDによって、ドライバーはかつてないレベルのスキルを求められるだろう。FIAとの協力に心から感謝しており、このマシンが生み出すバトルが待ち遠しい。」ヴァンサン・ガイヤールド(FIA テクニカルマネージャー)「GEN4はフォーミュラE史上最も進化したシングルシーターだ。ATTACK MODEでは815馬力以上を発揮し、常時AWD、改良された空力とグリップ向上したタイヤにより、世界最高水準のパフォーマンスを誇る。」新世代フォーミュラEの位置づけGEN4は、FIAのシングルシーターピラミッドの上位に位置するマシンとして、電動モータースポーツの新しい頂点を象徴する存在だ。フォーミュラEの象徴である「革新・競争・環境責任」の三本柱を進化させ、自動車メーカーがロードカー開発に直結する実証実験の場として活用できるプラットフォームへと進化している。フォーミュラEは“電動レースの頂点”を再定義GEN4の登場は、フォーミュラEが単なる都市型電動レースから、技術開発と環境革新の最前線へとシフトする象徴的な転換点だ。600kWの出力とAWD化により、従来のEVレースのイメージを超えたダイナミックなバトルが可能になる。さらに100%リサイクル素材を採用するなど、環境負荷ゼロを実現するモータースポーツの未来像を明確に打ち出した。FIAとフォーミュラEの共同開発によるGEN4は、各メーカーの電動パワートレイン技術を競い合う“実験場”として、電動車開発の新たな潮流を形成していくだろう。シーズン13の開幕とともに、フォーミュラEは再び“電動レースの革新者”としての存在感を世界に示すことになる。