一部関係者の予想を大きく裏切るかたちで、元FIA暫定事務総長のシャイラ=アン・ラオ氏がF1の統括団体である国際自動車連盟(FIA)に電撃復帰を果たした。しかも今回は、組織の中枢にさらに近づくポジションでの登場だ。FIAは水曜日、ラオ氏がモハメド・ベン・スライエム会長の特別顧問に任命されたことを正式に発表。この決定は、彼女の物議を醸した前回の退任劇と、現在進行中の大規模な制度改革のタイミングを考え合わせると、関係者の間に驚きをもって受け止められている。
これはラオ氏にとってFIAでの3度目の勤務となる。2022年にはモータースポーツ部門の暫定事務総長として復帰したが、わずか半年で突如として退任。その背景には、スライエム会長との確執や、当時報じられた性差別・ハラスメントの疑惑も絡んでいたとされている。ラオ氏は2016年から2018年までFIAの法務ディレクターを務めた後、メルセデスF1チームに移籍。チーム代表のトト・ヴォルフ氏の特別顧問も務めた経験を持つ。今回の復帰について、スライエム会長は次のようにコメントしている。「シャイラ=アン・ラオ氏をFIAに再び迎えることができ、大変うれしく思う。彼女はモータースポーツの世界で優れた実績を持ち、我々のチームにとって大きな財産となるでしょう。今後、すべてのFIA世界選手権の規制および商業的枠組みの強化に貢献してくれると確信している」FIAは公式声明の中で、「今回の任命は、FIAにとって極めて重要な時期に行われた」と強調。同時に、2024年度には220万ユーロの営業黒字を見込んでおり、2021年にスライエム会長が引き継いだ際の2400万ユーロの赤字からの大きな改善をアピールしている。ラオ氏もまた、発表に際して冷静かつ前向きなコメントを発表した。「FIA世界選手権全体を対象に会長をサポートできることを楽しみにしています。現在の会長のもとで大きな進展がすでに見られており、それをさらに発展させていきたいと思います。FIAは世界スポーツ界でも独自の地位を占める存在であり、未来のモータースポーツの強化に尽力していきたいです。」表向きには「継続性」と「前進」が語られているが、この異例の人事は、FIA内部の信頼関係や政治的な力学に再び注目が集まるきっかけとなるだろう。ラオ氏は5月1日付で新たな役職に就任。F1カレンダーでも最も商業的・政治的に活発な時期に合わせての登場となる。彼女の存在が更なる改革をもたらすのか、それとも波乱の火種となるのか――注目が集まっている。
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