フェラーリが2026年シーズン序盤で見せていたスタート性能の優位性が、FIAによるエンジン関連の調整によって打ち消される可能性が指摘されている。元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤは、この変更がメルセデスにとって追い風になるとの見解を示した。問題となっているのは、レーススタート時の加速特性だ。
フェラーリは開幕から優れた蹴り出しを見せており、テスト段階から他チームに対して明確なアドバンテージを築いていたが、マイアミGPから導入される新たな安全対策が、この差を縮める可能性がある。フェラーリの強みだった“スタートダッシュ”今季のフェラーリはスタート直後の加速でライバルを上回っていた。プレシーズンテストではルイス・ハミルトンやシャルル・ルクレールが力強い発進を見せ、ポジションを大きく上げる場面が確認されている。この傾向は開幕戦以降も続き、オーストラリアではジョージ・ラッセルがポールポジションからスタートしながらターン1でルクレールに先行を許したほか、中国ではハミルトンがキミ・アントネッリを抜いて序盤の主導権を握った。日本GPでもルクレールはポールのアントネッリをスタート直後に攻略している。フェラーリはこの強みの詳細を明かしていないが、ラッセルは「小型ターボの使用」が一因ではないかと指摘していた。MGU-H廃止が生んだ“スタートリスク”こうしたスタート性能の差は、2026年レギュレーションでMGU-Hが廃止されたこととも関係している。ターボの回転を事前に高めることが難しくなり、発進時のトルク特性が不安定になったためだ。実際、スタート直後の加速不足による危険な場面も発生している。オーストラリアではリアム・ローソンが発進に失敗し、後方から通常のスタートを切ったフランコ・コラピントが数センチ差で衝突を回避する場面があった。コラピントは「本当に、本当に運が良かった。こういうことは新しいマシンでは起こり得るが、とても危険でかなり不安定だった」と語っている。FIAの新対策とその影響こうした安全上の懸念を受け、FIAはスタート時の制御システムに変更を加えた。主なポイントは以下の通りだ。■ 異常に加速が遅い車両を検知する「ローパワースタート検出」システムの導入■ 検知時にはMGU-Kが自動展開され、最低限の加速を確保■ 後続車への警告として、車両の後部および側面に点滅ライトを表示■ フォーメーションラップ開始時にエネルギーカウンターをリセットこれにより、スタート時のばらつきが抑えられ、安全性が向上する一方で、特定チームが持っていた優位性は薄れる可能性がある。モントーヤ「メルセデスに有利に働く」モントーヤは、この変更がフェラーリのアドバンテージを消すと見ている。「個人的には、スタート時の変更とエネルギーの扱い方の調整はメルセデスに有利に働くと思う」とモントーヤは語った。「彼らが抱えていた不利を取り除くものだ。そしてメルセデスだけでなく、同じパワーユニットを使う全チームにも影響する」「メルセデス系のマシンの多くはスタートが強くなかったし、レッドブルも安定していなかった。この変更はスタート序盤におけるフェラーリの優位性を少し削ることになる」タイトル争いへの影響は限定的かもっとも、現時点での勢力図を見る限り、フェラーリは総合力でメルセデスに後れを取っている。コンストラクターズランキングでは45ポイント差、ドライバーズでもルクレールはアントネッリに23ポイント差をつけられている。スタート性能は序盤のポジション争いに大きく影響する要素ではあるが、レース全体のパフォーマンスを左右する決定的要因ではない。今回の変更によってフェラーリの武器が一つ削がれる可能性はあるものの、タイトル争いの構図そのものを一変させるかどうかは、今後の開発とレースペース次第と言えそうだ。