フェラーリの2026年F1マシン「SF-26」を巡って、ここ数日で情報が錯綜している。とくにSNSの一部アカウントによって誇張・変形された内容が拡散されており、ここで改めて、元記事が伝えていた事実関係と文脈を整理する。複数の情報筋、とくにAutoRacer.it周辺の取材によれば、SF-26の最終仕様は「未特定の遅れ」を経験したとされている。
ただしこれは、開発が停滞しているという単純な話ではなく、組み立て直前に発生した予期せぬ変更点があり、それに伴って追加テストが必要になったことが一因だと説明されている。その結果、SF-26の最初のシャシーはごく最近になってようやく承認された。一方で、ドライバーたちはすでにシートフィッティング作業を完了しているが、これは従来の発泡フォームによる型取りではなく、3Dスキャンによる新しい手法が用いられている。この点は、開発全体が止まっていたわけではないことを示している。ここで重要になるのが、チーム代表であるフレデリック・バスールが語っていた「リスク」という言葉の定義だ。バスールは以前から、リスクの大きさは自己評価では測れず、「他チームのマシンを見て初めて、自分たちが攻めすぎたかどうかが分かる」と説明している。つまり現時点でフェラーリが“アグレッシブ”なのか、それとも“保守的”なのかは、まだ誰にも判断できない。2026年マシンの方向性は、チームごとに大きく異なる可能性がある。その違いが初めて可視化される場として想定されているのが、バルセロナで行われる最初の合同走行だ。各チームが同一サーキットに集まり、同条件で走ることで、初めて相対的な立ち位置が見えてくる。もっとも、そこで目にするマシンの外観をそのまま信じるべきではない、という注意もある。関係者の間では、初期テストでは極端に「太く」「大きく」見えるボディワークが使われる可能性が指摘されている。これは真の空力形状を隠すと同時に、温度管理を安定させる目的があるとされる。実際、最初の数回の走行では、多くのチームが最新仕様から6〜7か月前の空力パッケージやフロアを装着した、いわば“偽装仕様”のマシンで走る可能性が高い。したがって、初期テストで他チームのボディワークを分析することは、ほぼ不可能に近い。もう一つ、バスールが懸念として示しているのが、いわゆる「グレーゾーン」の問題だ。規則を管理するFIAが、すべての抜け道を完全に封じることは、現実的には非常に難しい。「もし誰かが規則の範囲内で、単純に他より良い仕事をした結果として有利になるなら、それは称賛されるべきことだ。しかし、誰かがグレーゾーンを突いて圧倒的な性能差を生み出すようなことがあれば、それはF1にとって危険であり、FIAの極めてデリケートな問題になる」バスールはそうした趣旨の考えを示しており、2026年シーズンが“最高のシーズン”にも“最悪のシーズン”にもなり得る理由が、まさにそこにあると認識している。実際、過去には合法と判断された技術が、途中で禁止され、その間に大きな性能アドバンテージをもたらした例も存在する。新レギュレーション下では、そうした事例が再び起きる可能性を、誰も否定できない。現時点で言えるのはただ一つ、フェラーリがどこからスタートするのか、そしてSF-26が「攻めすぎたマシン」なのか、それとも「準備に苦しんだ結果」なのかは、まだ誰にも分からないということだ。現在のフェラーリの準備段階が外から見て「混沌としている」ように映るのは事実だが、それがそのまま競争力の欠如を意味するとは限らない。AutoRacer.itの記事は、こうした不確実性と文脈を丁寧に描いていた。しかしその一部だけが切り取られ、過度に誇張された形で拡散されたことで、本来の意図とは異なる受け止め方が広がった。今必要なのは結論ではなく、状況を冷静に見極めることだろう。