2026年F1レギュレーションのもとでは、これまで差別化要素ではないと見なされてきたギアボックスが、再びパフォーマンスの核心に浮上している。新世代パワーユニットの特性が、トランスミッション設計に新たな役割を与えたからだ。昨年まではコストが高い一方で性能差を生みにくいコンポーネントとされ、共通ギアの導入案まで議論された。しかしその案は採用されなかった。結果として、その判断は正しかったと言える状況になりつつある。
バーレーンテストでは、パドック内で再びギアボックスが話題となった。初回テストをトップタイムで終えたメルセデスは、構造補強の必要性に直面しているとの情報もある。新PUの特性が、トランスミッションにこれまで以上の負荷を与えているためだ。アンドレア・キミ・アントネッリは、その変化を率直に語っている。「ダウンシフトにとても集中した。ターボの押し出し方が違うから、全チームがギア比を変更していると思う。重要なのは、ターボを何とか回し続けてレスポンス遅れを減らすことだ。ショートギアを使うのは大きな助けになるが、最適化が必要だ。でも、今は良い方向にあると思う」ターボを回し続けるためのギア比選択が、新たなテーマになっている。ただし、それだけが焦点ではない。マックス・フェルスタッペンはレッドブルRB22で、通常はスタート時以外ほとんど使われない1速を積極的に活用した。より高回転を維持し、燃料を使いながらバッテリー充電を促進する戦略だ。2026年F1ではバッテリー容量が1周フル電動走行を賄うには不足している。回生ブレーキだけでは十分な電力を確保できず、長いストレートでリフト・アンド・コーストを強いられるリスクがある。そこで一部区間を低いギアで走行し、エンジン回転数を高めてエネルギー回収を補うアプローチが取られている。ギア比選択が戦略そのものを左右する時代へ特定状況で1段低いギアを使う運用は、従来とは異なるギア比配列を求める。ターボを効率よく機能させることと、低速域での充電効率向上という二つの課題を同時に満たさなければならないからだ。さらに、振動や負荷増大によりギア自体の強度向上が不可欠となる。冷却性能の最適化も信頼性確保の鍵になる。8速ギアボックス全体の設計思想が再定義されつつある。チームごとの選択も分かれている。レッドブルは長めの1速を採用。一方フェラーリとマクラーレンは短めの1速を選択している。スタート性能を重視するフェラーリは、初速加速を優先し、2速以降でMGU-Kを活用しながらトルクを解放する構えだ。第2回バーレーンテストは、シーズン前半を通じて固定されるギア比配列を最終承認する重要な場となる。コスト削減のために設けられた制約が、2026年F1ではパフォーマンスに直結する可能性がある。新時代のF1では、もはやギアボックスは裏方ではない。エネルギーマネジメントとターボ特性が支配するレギュレーションの中で、トランスミッションは再び勝敗を左右する存在へと回帰している。
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