2026年のタイヤコンパウンド最終決定期限が迫る中、ピレリは新型マシンにおける空力負荷の推定値がチームごとに大きく食い違っていることを明らかにした。「ドライバーに2026年マシンをシミュレーターで『走らせてすらいない』」と語るチームもあるなど、新レギュレーション下の開発はまるで大規模な思考実験の様相を呈している。
マシンはより細く軽くなり、アクティブエアロダイナミクスや内燃機関と電動システムの出力比率50:50といった大幅な変更が導入されるため、決定的なシミュレーションモデルが出来上がるまでには時間を要している。チームはコンセプトやシミュレーションの精度を数カ月かけて詰めることができるが、タイヤサプライヤーのピレリはより早い締め切りに直面している。最初のデッドラインは9月1日(月)で、この日にフロント25mm、リア30mm細くなる新タイヤの構造を各チームに提示しなければならない。しかしピレリによれば、チームから送られてくるシミュレーターデータは未成熟で、FIAが定める目標値とはしばしば大きな差があるという。その差は最大で30%に達する。「負荷に20〜30%の差があると、どれが正しいのか自問することになる」とピレリのチーフエンジニア、シモーネ・ベッラはオランダGP開幕前に英オートスポーツ誌を含むメディアに語った。「現時点では当然、最悪のシナリオを想定して対応しなければならない。そうすればどんな負荷にも備えられるからだ。そのうえでシーズン中に確認し、適切な評価をしていくことになる」タイヤはシーズン前にホモロゲーションされるため、ピレリは一度で正しく仕上げなければならない。さらにシーズン中の開発で負荷が増える可能性にも耐えられる必要がある。2023年にも例があるようにシーズン中の変更は可能だが、F1コミッションでの全会一致、あるいは安全性を理由にFIAが承認する必要がある。実際にはチーム間政治の影響で全会一致は困難なため、安全性を理由とする後者の可能性の方が高い。一方、ザウバーのスポーティングディレクター、イニャキ・ルエダは金曜日に、ドライバーをまだ2026年マシンのシミュレーションに「触れさせていない」理由として、ロジスティクスと精度を挙げた。ドライバーが2戦先のためにシミュレーターに入る日程がある場合、2026年用の走行はその時間を奪ってしまう。また彼の言葉によれば、2026年マシンは依然として「大きな速度で」開発中であり、現時点の姿を見せても実車と大きく異なる恐れがあるという。「ドライバーをC46(2026年型)に触れさせる日程は把握している」とルエダは述べた。「だが、見せる車が実際に走るものとはまだ大きく異なる恐れがあるので、あまりに早くやりたくはない」シミュレーションは10月末から11月初めまで未成熟な状態が続く見込みで、これは12月15日の最終期限(コンパウンド選定)の達成を難しくしている。不確実性の背景には、新レギュレーションによる大規模な変化がある。各チームは提示された課題に対して大きく異なる解法を模索しているようだ。空力設定の違いに加えて大きく影響する要素のひとつがブレーキローターのサイズだ。現行ではおおむね共通しているが、後輪ディスクを小さくし、エネルギー回生をより多くブレーキに利用しようとするチームもあるとされる。これは重量だけでなく放熱特性にも影響を及ぼし、タイヤ温度に直結する。「来年はそうした点でも異なるアプローチが見られるだろう」とベッラは語った。「我々はまた、タイヤがどのような温度域になるのかを理解するためにチームと情報交換をしている。ミュールカーでのテストはあまり参考にならない。来年はホイールアセンブリが完全に変わるからだ。だが、各チームが前後の温度管理において多様な手法を試みることになるのは間違いないと思う。温度に関しても負荷に関しても、シミュレーションでは収束が見られない。だからこそ、誰が現実に近くて、誰がそうでないのかを理解する必要がある」