ティレルは、1997年マシン『025』で型破りなルックスの“Xウイング”を導入した。ティレルが1997年シーズンに投入した025は、通常のサーキットではごく普通のF1マシンだった。しかし、最大限のダウンフォースが必要とされるモナコのようなツイスティなサーキットでは、コックピットの両側から斜めに生えるミニウイングが装着された。
デザイナーのマイク・ガスコインが考案したこのミニウイングは、レギュレーションで規定されていない抜け穴をついてダウンフォース稼ぐために設置された。だが、その効果よりも支柱と“Xウイング”というニックネームが与えられたその特徴的なルックスで記憶されている。当時のファンからは冷笑されたが、他チームはその空力面の効果に着目し、このコンセプトの研究に取り組み始めた。1998年からX型でなく1本あるいは2本のステーで支える形式になり、ザウバー、プロスト、ジョーダンも同様のデバイスを採用し始めた。だが、当時のFIA会長のマックス・モズレーは、その醜いルックスを嫌っており、同年のアルゼンチンGPでザウバーのジャン・アレジがピットイン時にエアホースを引っかける事故が起きると安全性という大義ができた。翌戦のサンマリノGPでトップチームのフェラーリが採用。FIAは安全上の理由からこのテクノロジーを廃止へと追い込んだ。このままいけば、全チームがイオンキャノン砲付きXウイングを装備することになると恐れたのに違いない。後発チームは必要に応じてXウイングを取り付ける形式をとっていたが、本家ティレルは、1998年マシン『026』をXウイングを前提に設計。禁止されたことで慢性的なダウンフォース不足に陥り、シーズン末にチームの歴史に幕を閉じた。 この投稿をInstagramで見る F1-Gate.com(@f1gate)がシェアした投稿 - 2020年 5月月5日午前5時38分PDT