カルロス・サインツJr.は、シンガポールGPを10位でフィニッシュし、控えめながらも満足げな笑みを浮かべた。土曜夜の時点ではグリッド20番手、実際のスタートは18番手。そこから苦しいレースが続いたが、終盤にようやく光が見えた。スタートからなんと52周にわたってミディアムタイヤを使い続け、背後の速いマシンを抑えきる。終盤10周を残してピットインすると、そこからは怒涛の追撃を開始した。
ピットアウト時は15番手で、前にはストロールがいた。サインツは53周目にカナダ人を抜いて14番手、54周目にボルトレトを抜いて13番手、55周目にはコラピントを抜いて12番手に浮上。そして60周目には角田裕毅とアイザック・ハジャーを立て続けにオーバーテイクし、ついに10位に食い込んだ。まさに圧巻の走りだった。「そうだね、本当に少し予想外のレースだった。正直、朝の時点ではセーフティカーが出るかとか、雨が降るかとか、いろいろ様子を見ていたんだ。結局はドライの退屈なレースになったけど、レースペースがとても良くて、ミディアムを誰よりも長く引っ張ることができた。その間、後ろのフレッシュなタイヤを履いたクルマを抑えながら、ソフトに履き替えた後は飛ぶようなペースで走れて、5〜6台を抜いてポイント圏内に入ることができたんだ」とサインツはDAZN F1に語った。サインツは長い最初のスティントの厳しさも認めた。「50周──正確に何周走ったかわからないけど──ミディアムで走るのは簡単じゃなかった。最後の方はフレッシュタイヤのベアマンやフェルナンド(アロンソ)が後ろに迫っていて、本当に厳しかった。でもすべてをコントロール下に置いて、ソフトに替えるタイミングを待ち、それで追い上げができたんだ」と説明した。「そう、本当に難しかった。シンガポールではいつもリアタイヤに苦しむけど、最初はかなり落ち着いて走るようにして、それがレースの鍵になったと思う。50周もの間ミディアムで走ってもペースを失わなかった。シーズンを通してずっとそうだけど、今回もすごくいいレースペースと予選ペースを見せられた。やっとそれを結果につなげることができたんだ。たぶん今日、グリッド中で唯一、前に進めたクルマだったと思う。ミッドフィールドの位置からこれだけ順位を上げるのは簡単じゃないけど、それをやってのけた。セーフティカーもない普通のレースで8台抜いたんだ」と胸を張った。そして、土曜の失格を受けての10位には安堵の表情も見せた。「昨日の失格を考えれば、チームにとって重要な結果だと思う。シーズン終盤のこの時期は、1ポイントでも大事だからね。今日はアストンマーティンやレーシングブルズより前でフィニッシュできたし、スタート位置を考えればダメージを最小限に抑えられた。しかもシンガポールみたいにオーバーテイクが難しいサーキットでね」とサインツは締めくくった。