スチュワードの一時的な職務停止に加え、2025年F1カナダGPの結果が5時間以上も確定しなかったことで、再びF1におけるスチュワードの裁定の信頼性が注目を集めている。ルールはいくら明確に定めても、その解釈や適用には常に主観的な要素が入り込む。だからこそ、F1におけるスチュワードの裁定の信頼性は、たびたび議論の中心に据えられる。正当な理由によってというよりは、大抵は過剰に騒がれる形でだが。
一部の論者は、カナダGP直前にデレク・ワーウィックがスチュワードの職務から外されたことと、決勝後に結果が確定するまでの5時間半の長い待機時間を関連づけている。だが、これは因果関係と相関関係を混同しているに過ぎない。ワーウィックに代わって、エンリケ・ベルノルディがFIAのジュネーブにあるリモート・オペレーション・センターからビデオリンクを通じてスチュワードの一員として参加した。このプロセスは、理想的とは言えないまでも、十分に機能したと理解されている。今回の大きな遅れの主因は、レッドブルがジョージ・ラッセルに対する抗議を即座に提出しなかったことに加え、終盤のセーフティカー導入のきっかけとなった2台のマクラーレンによる接触事故の検証だけでなく、レースコントロールがすでに指摘していたフルコースイエロー中のいくつかの違反行為もスチュワードが確認する必要があったことだ。つまり、問題は2つあったということだ。そしてそのうちの1つは、他よりもはるかに簡単に解決できるものだった。デレク・ワーウィックは、モータースポーツ界における重鎮だ。ル・マン優勝経験者であり、グランプリドライバーでもあり、さらに英国レーシングドライバーズクラブ(BRDC)の元会長でもある。そんな彼が、F1カナダGPのスチュワード職から突然外されたのは、あるギャンブル関連のウェブサイトにインタビューを提供し、F1における様々な話題について意見を述べたことが理由だった。その中には、スペインGPでのラッセルとフェルスタッペンの接触についての言及も含まれていた。ちなみに今年1月には、元F1ドライバーのジョニー・ハーバートがスチュワード名簿から完全に外されている。この件についてFIAは、「FIAスチュワードとしての任務と、メディア解説者としての職務は両立できない」と説明していた。F1では、毎戦4人のスチュワードが配置されており、そのうち1人は2010年以降、必ず元F1ドライバーが務めている。これは、当時のFIA会長ジャン・トッドが、スチュワードの裁定が一貫性に欠ける、レース現場の実情を理解していないという現役ドライバーたちの不満を受けて導入した制度だ。だが、そのスチュワードたちでさえ、元F1ドライバーであっても、実はボランティアである。彼らは、自分の時間と専門知識を善意で提供しているのであって、有償のポジションではない。もちろん経費は支給されるが、それも豪華なものではない。マックス・モズレー体制下のように、FIA幹部がワインリストの下段から注文できた時代は、もはや過去の話だ。その視点から見ると、無報酬のボランティアがPRインタビューに報酬を受け取って出演するのは理解できる。しかし、スチュワードという職務の性質上、その見た目は決して良くない。特に今回のように、カナダGP直前の政治的に敏感な状況下では、なおさらだ。レッドブルは、フェルスタッペンがペナルティポイントの危機に瀕している中で、他のドライバーがそれを狙ってくることを恐れていた。こうした状況への解決策として、F1ドライバーたち自身が提案しているのが「常勤スチュワード制度」だ。これは、報酬を支払うことで、彼らを正式な職業として雇うという案だ。もちろんこれで、ネット上の一部で飛び交う「不正」や「偏向判定」といった的外れな中傷がなくなるわけではない。しかし、少なくともチームや関係者たちの信頼を得るという意味では、有効な方策だ。とはいえ、最大の問題は「誰がその給料を払うのか」という点にある。FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、「新しい家電製品をAmazonで買うように、新しい審判を簡単に手配することなどできない」と繰り返し述べてきた。また彼は、レース審判に対するオンライン上の中傷を抑制する取り組みを始めるとともに、FIAの「スチュワードおよびレースディレクター育成制度(パスウェイ)」を立ち上げ、キャリアパスの構築を図ってきた。だが、F1スチュワードに報酬を支払うべきかという議論が昨年持ち上がった際、スライエム会長は「FIAにはそれだけの財源がない。ドライバーがその費用を払ってくれるなら話は別だ」と返答したという。また、グランプリ中の判断が議論になるたびに、FIAは「スチュワードはFIAから独立している」という理由で「ノーコメント」を貫くのが常だ。常勤スチュワード制度は、ここ数ヶ月で指摘された問題への明確な解決策になり得る。だが、その実現には関係者たちが妥協する覚悟を持たなければならない。一方で、チェッカーフラッグ後に長時間レース結果が確定しないという状況を避けるために、もっと簡単に導入できる改善策もある。その1つが、審議する事案の優先順位を柔軟に変更できるようにすることだ。レース結果に直接関わる案件を優先して処理するのは、商業的にもスポーツ的にも、そして論理的にも理にかなっている。チェッカーフラッグが振られてから数時間経っても結果が確定しないというのは、F1にとっても良い印象を与えない。今回のようなケースで、すでに召喚されていたドライバーやチーム代表が決まった時間まで待機を求められたとしても、それは「より大きな目的」のために甘受すべきだろう。また、現在2000ユーロとなっている抗議申し立て時の保証金の金額を見直すのも一案だ。たとえ予算制限があるとはいえ、F1チームにとってこの額は微々たるものでしかない。今回のレッドブルによる抗議は、好意的に見てもかなり楽観的かつ強引だった。これは、人間の認知バイアスがいかに判断を誤らせるかを示す例でもある。レッドブルは、セーフティカー導入中にラッセルがフェルスタッペンを挑発して無謀な行動を引き出し、ペナルティに追い込もうとしていたと見なした。この事例は、オンボードカメラの映像というものが、いかに「証拠」としての価値を持っているように見えて、実際には先入観を補強する材料になり得るかを示している。だが今回メルセデスは、ラッセルがセーフティカー中のデルタを守っており、加減速も通常の範囲内であることをデータで容易に証明できた。実際に加減速が不規則だったのはセーフティカー側...