ジュール・ビアンキの家族は、ジュール・ビアンキが“びまん性軸索損傷”であることを公表した。 四日市市にある三重県立総合医療センターに入院中のジュール・ビアンキについて、FIAは6日(月)に容体は「危篤状態だが安定している」と明かしていたが、翌7日(火)にはマルシャがジュール・ビアンキの家族代わって声明を発表、容体に関する情報を発表した。
「私たち家族にとって本当に苦しい時間ですが、世界中からジュールへの応援メッセージや愛情に満ちた言葉を頂いていることは家族にとって本当に大きな慰めになっています。心から感謝申し上げます」 「ジュールは四日市にある三重県立総合医療センターの集中治療室で治療を受けています。彼は、びまん性軸索損傷を患い、重篤な状態にありますが、それでも安定した容体です。病院の医療専門家の方々が全力を尽くして治療にあたってくださっており、事故以来、彼らがジュールのために尽くしてくださったすべてのことに感謝しています」 「また、ジェラード・サイヤン博士が駆けつけてくださり、FIAメディカルコミッション代表が付き添ってくださっていること、スクーデリア・フェラーリの要請を受けてローマ・ラ・サピエンツァ大学の神経外科医であるアレッサンドロ・フラーティ教授が来日してくださったことに感謝しています」 「彼らは本日病院に到着し、ジュールを治療している医療関係者と会いました。我々家族に助言ができるよう彼の臨床状態に関してしっかりと情報が伝えられています。サイヤン博士とフラーティ教授は三重県立総合医療センターが最高の治療を施してくださっていると理解しており、日本の医療仲間に感謝したいと述べています」「病院はジュールの観察と治療を続け、さらなる医学的アップデートは、しかるべきときに提供されます」脳脊髄損傷センターによると、びまん性軸索損傷は最もよく見られる外傷性脳損傷のひとつだが、同時に最も破壊的なもののひとつでもあるとされている。一般的に頭部に急激な加減速が加わったことによって、軸索(神経細胞から伸びる1本の長い神経線維)が広範囲にわたって切断される脳損傷をいう。重症度はケース・バイ・ケースだが、重度のびまん性軸索損傷を患った生存者の約90%は意識不明のままであり、意識が回復する10%の人々も障害を抱えるケースが多いとされている。ジュール・ビアンキの事故は、200キロ以上のスピードで重さ3トンのクレーン車両に衝突している。近い将来、フェラーリのレースドライバーへむけて有望なキャリアを進めていたジュール・ビアンキだが、完全に回復し、通常生活に戻る可能性は低いと言わざるを得ない。家族によって気丈にも公表されたこの病名を、F1界は同じ覚悟もっと受け止めなければならない。だが、たとえ1%であっても奇跡の可能性を信じてジュール・ビアンキが戻ってくる日を祈りたい。【びまん性軸索損傷】びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない病態。強い外力で脳に回転力が生じた場合、脳深部は脳表部よりも遅れて回転するため、脳がねじる。その結果、軸索が強く引っ張られ、広範囲に断裂し、機能を失うと考えられている。予後は一般的に悪く、回復しても、後遺症として、意識障害、高次機能障害や麻痺などが見られる。