アウディ R18 e-tron クワトロは、2014年のル・マン24時間レースで、昨年に比べ22%も少ない燃料で総合優勝を獲得し、新たな軌跡を歴史に刻んだ。2014年のレギュレーションでは、アウディ R18 e-tron クワトロに大幅な燃費性能向上が求められた。それに対してアウディは、エアロダイナミクスの最適化、45kgもの軽量化、4リッターV6 TDIエンジンの新開発、ハイブリッドシステムならびにドライブトレインの効率向上など最新技術を駆使してレギュレーションに対応した。
その結果、今年優勝したアウディ R18 e-tron クワトロのゼッケン2号車がレースで使用した燃料は、昨年と比べて22%も少ない量になり、これは初めてTDIエンジンを導入した2006年と比べると、実に38%もの燃費向上になる。昨年のマトリックスビーム テクノロジー搭載のLEDヘッドライトに続き、今年はアウディ レーザーライトが、ル・マンで試され、市販モデルに反映された革新的技術のひとつとなっている。過去16回のル・マン出場で13回の優勝を獲得したアウディの勝率は、実に81.25%となる。1923年以来続くル・マンの歴史の中でも、短い期間でこれほど多くの優勝を獲得したチームは、アウディ以外にはない。最多優勝記録を持つのは通算16回優勝のポルシェだが、この記録は1970年から現在にかけて更新されたもの。レースの総合優勝の他に、アウディは今年のルマンで最も燃費性能が優れたマシンに贈られる、ミシュラン トタール パフォーマンスアワード2014も受賞した。タイヤメーカー主催のこの賞を受賞したのは、ゼッケン2号車のアウディ R18 e-tron クワトロだった。優勝したゼッケン2号車は、合計29回のピットストップで11回のタイヤ交換を行った。複数のスティントでタイヤを温存し、合計わずか12セットのタイヤで24時間レースを走り切った。アウディがLMP1プロジェクトを立ち上げて以来のパートナーであるタイヤメーカー ミシュランにとって、今年の優勝は通算23回目となった。アウディの優勝は通算13回目となるが、2004年から2008年にかけては5連勝を記録しており2010年以降はル・マン不敗記録を更新中。ラインハルト・ヨースト率いるヨースト レーシングにとって、今年の優勝は通算15回目になる。ドイツのオーデンワルドに拠点を置くチームヨーストは、15回のうち11回をアウディと、2回をポルシェと、そして1994年にはダウアー・レーシングと、2003年にはベントレーとのパートナーシップのもとで優勝している。優勝したマルセル・ファスラー / アンドレ・ロッテラー / ブノワ・トレルイエ組は、計29回のピットストップで5,165.391kmを走破した。彼らがマシンを停めていた時間の合計は58分12.362秒だった。 ル・マンでこれほど長く走り続けていたことは、アウディ R18 e-tron クワトロ史上はじめてのことだった。379周を走破して優勝したマシンの平均速度は214.927km/hだった。最速ラップは、アンドレ・ロッテラーが記録した3分22.567秒で、この周の平均速度は242.213km/hに達する。アウディがル・マンで最速ラップを記録するのは通算10回目となった。今年のル・マンには、26万3,300人の観客が訪れた。ちなみにマルセル・ファスラー / アンドレ・ロッテラー / ブノワ・トレルイエ組が優勝した2012年の観客数は24万人、2013年は24万5,000人だった。トム・クリステンセンは、今年も自らの偉業を達成した。今年のレースを終え、彼は通算18回の出場で、9回の優勝を含む14回目の表彰台を獲得。過去にトム・クリステンセンが完走出来なかったのは、わずか4回だけ。彼は完走したレースではすべて上位3位以内を獲得していることになる。ル・マン専用にロングテイル バージョンのアウディ R18 e-tron クワトロが開発されたのは、空気抵抗低減のためだった。このバージョンは、WECのレギュラー大会向けマシンに比べ、最高速度が30km/hも向上している。今年のレースでは、セフティカーはわずか4回しか導入されなかった。セフティカーピリオドの合計時間は1時間38分程度で、速度が60km/hに制限される“スローゾーン”の適用もわずか3回・合計1時間7分だけだった。今年の優勝をうけ、リザーブのマルク・ジェネを含むアウディのワークス ドライバー10人は、合計で20回のル・マン優勝を獲得した。1999年から今までに、アウディは合計31回の表彰台を獲得している。13回の優勝の他には、2位を7回、3位を11回獲得している。今年のアウディの優勝は、TDIエンジンとして8回目、e-tron quattro ハイブリッドシステム搭載モデルとして3連勝目、そしてドイツメーカー、クローズホイール マシン、ターボエンジン搭載モデルとして31回目となった。グループを形成しているフォルクスワーゲングループとしては、アウディ13回、ベントレー6回、ブガッティ2回、そしてポルシェ16回。つまりグループ全体で37回目の優勝となった。マルセル・ファスラー / アンドレ・ロッテラー / ブノワ・トレルイエ組がル・マンで優勝するのは、過去4年間で3回目。1923年以来続くル・マンの歴史の中で、同一ドライバーの組み合わせによる優勝は、 フィル・ヒル / オリビエ・ジャンドビアン組、ジャッキー・イクス / デレック・ベル組、フランク・ビエラ / エマニュエル・ピロ / トム・クリステンセン組が同じく3回の優勝を記録しているだけで、過去に同一ドライバーで4回の優勝を果たした例はない。彼ら3人の優勝は、イギリス人エンジニアのレーナ ゲイドとの組み合わせでも3回目となる。ゼッケン2号車に注目すると、今年で8回目のル・マン優勝になる。アウディはゼッケン2号車で2008年と2011年にも優勝している。今年は、出走54台のうち38台が完走し、その比率は70.37%だった。アウディでは3台出走のうち2台がチェッカーフラッグを受けることが出来た。今年のル・マンでは、9台のレースリーダーが生まれた。これは、トップが8回も入れ替わったということになる。LMP1クラスでエントリーした3 つのマニュファクチャラーズチームは、すべてリーディングラップを記録している。アウディは、220周目にトップを獲得。その後は、アウディ同士でトップを入れ替えながら走行し、ゼッケン1号車が66周、ゼッケン2号車が73周のリーディングラップを記録した。
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