2026年F1レギュレーション下で導入されたアクティブエアロは、各チームの解釈の違いを早くも際立たせている。バルセロナでの初期走行では、アウディF1とアルピーヌF1がリア周りで特に異色の解決策を採用していることが確認された。2026年レギュレーションは、FIAが定める枠内でありながら、エンジニアの発想力を強く刺激している。初期テストの段階から、設計思想の違いが明確に現れており、その中でも大きな変化のひとつがアクティブエアロの役割だ。
かつてのDRSのように「追い抜きのための装置」ではなく、2026年からはポジションに関係なく、ストレートで常時活用される空力デバイスへと性格が変わった。この新しい思想は、リアウイングの可動フラップの設計にも如実に表れている。フラップの形状、可動するエレメントの数、さらにはサーキット特性に応じてレースごとに仕様を変える可能性まで、各チームのアプローチは多岐にわたる。従来型から分岐する“開き方”の哲学2025年までの規則では、可動範囲は厳しく制限されており、多くのチームは最大85mmの開口を確保するため、アクチュエーターでフラップの前縁を持ち上げ、後縁は固定したままという方式を採用していた。回転の支点(ピボット)はフラップ後端に置かれ、前方が持ち上がる構造が“標準解”だった。しかし2026年規則では、この前提が崩れ始めている。大半のチームは従来型を踏襲しつつ、外側でエンドプレートを超える高さまで前縁を持ち上げ、ストレートでのドラッグ低減を狙っている。一方で、アルピーヌF1とアウディF1は明確に異なる道を選んだ。アルピーヌは“逆作動”、アウディは“中間解”アルピーヌF1は、これまでとは逆に後縁が下がり、前縁が固定される構造を採用している。結果として、可動フラップはメインプレーンの延長のような形状となり、従来とは異なる流れを作り出す。そして、さらにユニークなのがアウディF1の選択だ。ヒンウィルの技術陣は、2枚のリアフラップが回転するピボットを、サイドサポートの中央に配置した。サイドサポート自体は規則で固定されているため、フラップのみが中央支点を軸に回転する構造となっている。この結果、アウディR26のフラップは、開いた際にほぼ水平にはならず、斜めに傾いた“オブリーク(斜行)”な姿勢を取る。他チームと比較すると、フラップ間に生じる開口は小さいが、角度そのものが大きく異なるのが特徴だ。斜めに開くことで変わる気流の向きフラップが斜めに開くということは、単に抵抗を減らすだけでなく、リア周辺の気流の方向そのものを変化させることを意味する。視覚的にも、空気が下方へ押し込まれるような挙動が見られ、これは強い傾斜角によって生まれる独特の流れだ。作動方式も他チームとは異なる。多くのチームが2つのアクチュエーター接点を使い、2枚の可動フラップを同時に制御しているのに対し、アウディF1ではアクチュエーターは1枚目のフラップのみに接続されている。2枚目のフラップはパッシブな存在で、2枚を結ぶ小さな支持構造によって引きずられる形で動作する。つまり、直接アクチュエーターで制御されているわけではない。2026年F1のアクティブエアロは、単なる開閉機構ではなく、気流の向きや性質まで含めた空力思想の競争に突入している。アウディF1の斜め開口という解釈は、その象徴的な一例と言える。