2026年F1レギュレーションを前に、新たにパワーユニットメーカーとして参戦する2陣営――アウディF1とレッドブル・パワートレインズ・フォード。その比較について、アウディF1プロジェクトを率いるマッティア・ビノットが率直な見解を示した。ビノットは、短期的にはレッドブル・パワートレインズ・フォードが「より特化したスキル」を持っていると認める一方で、「アウディというブランドのバックグラウンドと、その知識が長期的には確実に差を生む」と語っている。
2026年F1規則と新規メーカー参戦2026年F1は、マシンの小型・軽量化、アクティブエアロの導入、そして電動比率50%のパワーユニットという大きな転換点を迎える。F1史上でも屈指の大改革であり、これが新規メーカー参戦を後押しした。フォードはレッドブルと提携し、レッドブル・パワートレインズ・フォードとして参戦。一方、アウディはザウバーを母体としてF1ワークス体制を構築している。チーム代表にはジョナサン・ウィートリーが就任し、組織作りは着実に進められている。「正しい道」を進むアウディF1ビノットはロイターの取材に対し、アウディF1の現状を次のように説明した。「プロジェクトは正しい道を進んでおり、正しい方向性にある。信頼性も少しずつ築けている」アウディF1は、カタール投資庁(QIA)の出資を受け、さらにRevolutとのタイトルスポンサー契約も締結した。これにより、F1参戦への本気度を疑問視する声は沈静化したとビノットは語る。「社員にとっては非常に明確だ。我々は拡大し、長期的に投資している。現在行っている投資はすべて長期プロジェクトで、パフォーマンスという形で成果が見えるのは3年から4年後になる」短期の現実と2030年を見据えた戦略ビノットは、2026年シーズンからいきなりトップに立つことは想定していないことも明言している。「来年、最高のエンジンを持つとはまったく思っていない。我々は来年、サプライズを起こすつもりはない」アウディF1は、2030年を本格的なタイトル争い参入の目標年に据えている。レッドブル側の即効性とアウディの対抗軸レッドブル・パワートレインズ・フォードについては、クリスチャン・ホーナーが「メルセデスから200人以上の人材を引き抜いた」と語っており、即戦力となる専門家の集積が短期的な強みになるとされる。この点についてビノットも、次のように認めている。「彼らは、より特定分野に特化したスキルを持っている。ただし、我々にはアウディというメーカーのバックグラウンドがあり、その知識は長期的には確実に差を生む」ザウバーを基盤とする現場の手応えアウディF1の基盤となるザウバーは、2025年シーズンに70ポイントを獲得。ドライバーはニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレトのコンビで、アウディF1時代へと移行する。ヒュルケンベルグは、チームの成長と統合についてこう語っている。「今年の進歩は本当に良かった。チームとしての働き方やコミュニケーション、オペレーション面で大きな改善が起きている。決して悪い位置にはいない」さらに、今後の課題として、新パワーユニット部門とヒンヴィルのレースチームをどう統合していくかが重要になると指摘した。“即効性”か“蓄積”か即戦力の専門人材を大量に集めたレッドブル・パワートレインズ・フォードと、巨大自動車メーカーとしての研究開発の蓄積を武器にするアウディF1。両者のアプローチは対照的だ。2026年の初期段階では明確な差が見える可能性はあるが、ビノットの視線はさらに先にある。最終的に差を生むのは、短期的な成果ではなく、長期的な知識と開発力の積み重ねになる。
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