フェルナンド・アロンソは、先週末のF1アブダビGPで17年間にわたるF1キャリアに一旦ピリオドを打った。2001年にF1デビューして以来、無慈悲なレーススタイルで名を馳せてきたフェルナンド・アロンソが、フェラーリとマクラーレンでで王座に見放され続けてきた数年間を過ごしたことでレースクラフトに変化はないものの内面は軟化していった。
フェルナンド・アロンソの無線やリタイア後に見せるしぐさは、いつしか最もファンに親しまれるようになった。「報いだ」(2017年 F1イタリアGP)9月初旬に開催されたイタリアGP決勝、ルノーのジョリオン・パーマーとポジション争いを展開していたアロンソは、シケインをショートカットしてゲインを得たパーマーに対してスチュワードが5秒加算のペナルティしか科さなかったことに憤慨。その後、無線を通じてパーマーがレースをリタイアしたことを伝えられたアロンソだったが、彼の口をついて出たのは「報いだ(Karma)」という一言だった。「GP2エンジン!」(2015年 F1日本GP)マクラーレン・ホンダへ移籍してからアロンソの中でずっとくすぶり続けてきた不満が、シーズン最低のチームパフォーマンスとなった日本GPでついに爆発。ホンダのホームレースでポイント圏外のレースを強いられる体たらくに、アロンソは無線を通じて「みっともない。すごく恥ずかしい」と不満を伝えると、「GP2エンジンだよ、GP2!」と吐き捨て、最後には言葉にならない叫び声で悔しさを表現した。当時のMcLarenのボス、ロン・デニスもさすがにこれは容認できないと思ったのか、レース後のインタビューで「(アロンソのレース中の発言は)私のチームのドライバーに求めるプロフェッショナリズムに沿うものではなかった」とコメントしてアロンソに釘を刺した。デッキチェア(2015年 F1ブラジルGP)予選中に壊れるようなマシンを用意した不甲斐ないチームに中指を立てるよりも効果的に怒りを伝える方法とは、マシンを降りてコース脇のデッキチェアに寝そべり、日光浴を決め込むことだ。アロンソが2015シーズンのインテルラゴスでの予選中に見せた行動は、「(本来なら予選アタックしているはずの自分が)なぜこんなところで暇つぶししているんだ?」というメッセージを極めて明確に伝え、#PlacesAlonsoWouldRatherBeというハッシュタグが流行した。「まるでアマチュアだ」(2015年 F1カナダGP)2015シーズンのカナダGPがスタートしてからわずか24周後に燃費セーブを無線で指示されたアロンソは、苦しい口調で「いやだ。絶対にいやだ」と返答。それでも引き下がらずに燃費セーブを懇願するエンジニアに対して、アロンソは「(燃費以前にマシンは)すでに大きな問題を抱えていて、こんな状態でドライビングしていてはまるでアマチュアだ。だから今は自分のポジションを守ることに集中し、燃費のことはあとで考える」と突き放した。結局アロンソはこのレースをリタイアし、第5戦スペイン・第6戦モナコに続く3戦連続リタイアを記録した。「君のユーモアセンスは好きだよ」(2015年 F1ロシアGP)2015シーズンのロシアGP決勝中盤、無線を通じて「君はウィリアムズのフェリペ・マッサを相手に最終順位を争うことになる」と伝えられたアロンソはそのメッセージを否定。「君のユーモアセンスは好きだよ」と返してエンジニアとの通話を打ち切った(このシーズン、ウィリアムウズの平均レースペースは常にマクラーレンのそれをはるかに上回っていた)。彼は結果的にマッサに順位を奪われたが、ポイント獲得まであと一歩の11位でフィニッシュし、苦難の続くシーズンの中でわずかながらの励みを得た。「これから先のシーズン、こんな日曜日がもっと過ごせるといいね」とアロンソはレース後に無線でチームに伝えたが、残念ながら、彼とマクラーレン・ホンダの苦難はそのあとも続いた。「あとは君がやってくれ」(2017年 F1ロシアGP)レースを戦っている最中にマシンの信頼性に起因するトラブルと格闘するならまだしも、フォーメーションラップの時点でエンジン温度が許容レベルを超え、レーススタートさえできない時の苛立ちは計り知れない。これこそまさに2017年のロシアGPでアロンソが体験したことで、彼のMCL32はグリッドに辿り着く前に停止した。エンジニアから「(リセットボタンを)3回押してくれ、頼む」と伝えられたアロンソは愛想を尽かした様子でこう答えた。「もうやった。あとは君がやってくれ」カメラクルーに転職(2016年 F1ブラジルGP)2016シーズンのブラジルGPは前シーズンのデジャヴのような展開になり、アロンソはまたフリープラクティス中にコースサイドにマシンを停めた。しかし、アロンソは12ヶ月前に楽しんだデッキチェアでの日光浴よりも積極的な行動に出た。セナSに配置されていたFOMの中継用リモートカメラを拝借し、そのセクションを通過するライバルたちの姿を撮影しようと試みたのだ。彼のカメラの腕は決して褒められたものではなかったが、その行動がチームに対して示したメッセージは明確だった。「今の僕はカメラを持っている方が貢献できる」と。
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