2025年F1アブダビGP決勝で起きたランド・ノリスと角田裕毅の攻防は、マックス・フェルスタッペンのタイトル争いにも影響したとして大きな議論を呼んだ。そんな中、かつてフェルスタッペンの王座獲得を後押ししたセルジオ・ペレスが、この出来事に関する“ある投稿”へ反応し話題となっている。決勝23周目、ノリスはターン5〜6の間で角田裕毅をオーバーテイクしたが、この際のコース外走行によるアドバンテージ取得の疑いで調査対象に。
一方の角田裕毅も複数回のライン変更が問題視され、両者とも審議対象となったが、最終的に角田裕毅のみ5秒ペナルティが科され、ノリスはお咎めなしという結論に至った。この裁定にはSNS上で多数の反応が寄せられた。レッドブル時代、2021年アブダビでフェルスタッペンの逆転タイトルを支える歴史的ディフェンスを見せたペレスに対し、「この場面で必要だったのは“あのペレス”ではなかったか」といった声も上がる中、当のペレス自身もSNSでこの話題に加わった。彼が反応したのは、映画『アベンジャーズ』シリーズの“サノス”にペレスの顔を合成し、彼の名言「Perhaps I treated you too harshly(たぶん、君に厳しすぎたんだ)」を重ねたミーム画像。ペレスはこれを引用し、短く「Perhaps(笑)」と投稿。これが大きな拡散を呼び、18万件以上の「いいね」を記録している。■2021年にセルジオ・ペレスがやったことセルジオ・ペレスにとってレッドブルでの最初のシーズンは決して楽ではなかった。しかしフェルスタッペンは、アブダビGPで自身がタイトルを獲得したあと、チームメイトの助けがなければ自分は王者になれなかったと語った。それはよくある“チームメイトへのお世辞”ではなく、アブダビでペレスがルイス・ハミルトンを抑えた 2周 に対する非常に具体的な称賛だった。もしこの2周がなければ、レースのあの物議を醸した結末は起きなかった可能性すらある。「チェコがいなければ、僕はここに座っていないと思う。彼がいなければ彼ら(メルセデス)はセーフティカーでピットできていたしね」とフェルスタッペンは語った。「だからチェコは本当に素晴らしい走りをしてくれた」しかしペレスの介入が重要だったのは、ハミルトンとフェルスタッペンの差を約8秒奪ったことだけではない。レースの流れに大きな影響を与えた点だ。もしハミルトンがペレスの後ろで時間を失わず、順調にフェルスタッペンとの差を広げていたら、36周目のVSCで“安いピット”を行えた可能性が高かった。ヤス・マリーナでの安全車下のピットロスは約14秒だが、実際にはその時点でフェルスタッペンとの差は7秒弱だった。「そのタイミングでの防御は本当に重要だった」とペレス。「ルイスはレースをコントロールしていて、VSCのウインドウを完全に持っていた。彼は何でもできた。でも僕はすごく古いタイヤだった。それでもうまくいって、マックスとチームを助けられて嬉しい」ハミルトンがVSCで止まっていたら、レースの残りは全く違った展開になっていた可能性が高い。クリスチャン・ホーナー代表も当時、ヘルメットを脱いだペレスを称賛していた。「ルイスを抑えてマックスを引き寄せた。今日の勝利にチェコが大きく貢献した。まさに“全開で行く”男だ」現在ペレスは2026年のF1復帰が決定しており、新規参戦チームのキャデラックF1でバルテリ・ボッタスとともに新シーズンを戦う予定だ。■ 2025年に角田裕毅ができなかったことオスカー・ピアストリもハードでロングランを行っていたため、角田裕毅がそのピアストリのタイトル争いに影響を与えるチャンスはなかった。しかし、もう一人のマクラーレンを妨害するチャンスは明確に存在した──角田裕毅が走り続けたことで、ランド・ノリスが22周目に新品タイヤで戻ってきたとき、角田裕毅が3番手を走っていたからだ。レッドブルは角田裕毅に「捕まったら出来ることは全部やれ」と伝え、角田裕毅は「分かってる、任せて」と返した。しかしノリスはすぐに角田裕毅を抜き去った。角田裕毅が前でラインを変えたため、ノリスはロングストレート内側のラインをまたいで避ける必要があったにもかかわらず、である。角田裕毅は、変則的なライン変更で得た5秒ペナルティは「非常に厳しい」と主張し、The Race の質問に対して「ただスリップストリームを切ろうとしただけ」と語った。FIA のガイドライン上、後続との距離が十分であれば許容される動きだ。しかし今回は、スチュワードは角田裕毅が「複数回の方向転換を行い、その結果#4(ノリス)が接触回避のためにコース外へ行かざるを得なかった」と判断した。角田裕毅自身は、「うまくいってもあと1周しか抑えられなかった」とし、マクラーレンが迫る中でレッドブルの無線が「パパパパパパパパ」と繰り返され、注意を削いだと感じていたという。「彼らのストレスは感じたけど、『見て、分かってる。話したとおりやるから、できる限り守るよ』と思っていた。簡単に前に出すメリットなんてないし、とにかく最善を尽くした。でもノリスはすごい勢いで来て、一気に抜いていっただけだ」と角田裕毅は語った。角田裕毅がフェルスタッペンとレッドブルのためにその瞬間にできた最善の仕事は、ランド・ノリスの背後にいたシャルル・ルクレールにノリスへ追いつく、あるいは抜くチャンスを与えることだった。ルクレールは角田裕毅に追いつくノリスのわずか1.6秒後方にいた。ただしそのためには、角田裕毅はさらに危険なほどの防御を行う必要があり、仮にルクレールがノリスを抜けたとしても、ノリスがそのままフィニッシュまで留まる可能性は低かっただろう。だが、ペレスがこれを見て“物足りなさ”を感じたのは理解しやすい。