角田裕毅(レッドブル・レーシング)は、F1ハンガリーGPで再び厳しい週末を過ごした。表面的には、角田裕毅がハンガリーGPを17位でフィニッシュし、チームメイトのマックス・フェルスタッペンに8ポジション差をつけられたことは、日本人ドライバーにとってさらに痛ましい結果と映る。しかし、今季途中にレッドブル・レーシングへ昇格して以来、今回の週末は角田裕毅にとってベストパフォーマンスのひとつだった可能性もある。
FP2では今季初めてフェルスタッペンより上位タイムを記録し、Q1では0.2秒以内と迫った。だが、レッドブルが直面した“現実の洗礼”──ライバル勢と比べて著しく劣るパフォーマンス──により、それだけではQ2進出には至らなかった。決勝ではピットレーンスタート、好まれていなかったソフトタイヤへのスイッチ、さらにはフロントウイングのダメージなど、複数の要因が角田裕毅の追い上げを妨げた。週末中には、角田裕毅のマシンに加えられていたある設定変更が、ドライバーに事前に知らされていなかったことも発覚している。設定変更を事前に知らされなかった怒りFP3で予選シミュレーションを行っていた角田裕毅は、最初のアタックラップで第1コーナー進入時にロックアップを喫し、ラップを中断。その後、ステアリング上のダイヤルを操作してショートランとロングランの設定を切り替えようとしたが、「なんか全然感触が違う。トグルの設定合ってる?」と無線で疑問を呈した。これに対し、担当レースエンジニアであるリチャード・ウッドは「あと2つ上だ」と返答。角田裕毅は「それってロングラン用のモードじゃない?」と問い返すと、ウッドは「リセットされた」と答えた。これに対して角田裕毅は「それ、セッション前に言うべきでしょ。こっちは寝ぼけてるわけじゃないんだから」と怒りをあらわにした。この設定ミスについて角田裕毅はレース後、次のように述べた。「(この設定ミスは)我々のガレージの問題です。簡単に防げたことを防げなかった。我々が普段やっているはずのことをやれなかった。これは僕がコントロールできる問題じゃなくて、チームがコントロールすべきことなので、本当にフラストレーションが溜まりました。レッドブルに来てから、こういうことが少し増えてきた気がするので、今後改善してほしい。FP3では大きなセットアップ変更を行っていたので、それを確認できなかったのは残念です。小さなディテールが予選に大きく影響するので、きちんと話し合う必要があると思います」角田裕毅、ハンガリーGPでレッドブルRB21を駆る。週末中の“設定リセット”に本人の知らないまま変更が加えられていたチーム内での評価と今後の展望今季の角田裕毅にとって最大の課題は、新チーム代表ローラン・メキースに対して来季もレッドブルにふさわしい存在であることを証明することだ。現在の成績だけを見れば説得力に欠けるかもしれないが、角田裕毅を引き続き起用すべきとの声もある。規則変更が控える中、チームにとって“安定性”が重要となり、100戦以上のGP出走経験を持つ角田裕毅のようなドライバーは開発面で大きな武器となる。現時点で角田裕毅がレッドブルを離脱した場合の明確な後任は少なく、育成ドライバーであるアイザック・ハジャーが有力視されているが、即戦力となるかは未知数だ。なお、チーム代表のメキースは、角田裕毅に残留のために何をすべきかを明確に伝えており、同時にチーム側にも、フェルスタッペンとのギャップを縮めるためのサポート強化が求められている。実際、スパで角田裕毅に最新アップデートを供給するよう尽力したメキースだが、ハンガリーではその努力が実を結ぶどころか、設定リセットによって角田裕毅は再び後退を強いられる結果となった。