角田裕毅(レッドブル)とジョージ・ラッセル(メルセデス)が、2025年F1第13戦ベルギーGPのスプリント予選後にFIAスチュワードにより召喚され、いずれも「不要に低速で走行した」ことにより、戒告処分(Reprimand)を受けた。角田裕毅にとっては今季2回目の戒告となり、規定に基づくペナルティ発動までのリーチがさらに一段階進む結果となった。この違反は、FIA F1スポーティングレギュレーション第33.4条、ならびにその週末のレースディレクターによって発行されたイベントノートの項目1に違反するものであると判断された。
スチュワードが問題としたのは、角田裕毅とラッセルがスプリント予選中またはその終了後のいずれかのラップにおいて、FIAがあらかじめ設定した最大所要時間──具体的には「第2セーフティカーラインから第1セーフティカーラインまで」の区間を走行する際の所定タイム──を超過したという点にある。この時間制限は、スプリント予選や通常の予選、さらにピットレーンが開放されたあとのレコノサンスラップ(レース前の確認走行)などにおいて、「不要に低速な走行を防ぐ」目的で設定されているものであり、明確な競技規定違反として処分対象になる可能性がある。レースディレクターのイベントノートでは、該当の項目1に以下のような記述がある:「スプリント予選、予選、またはレースの際にピット出口が開かれた状態で行われるレコノサンスラップ中、およびスプリント予選・予選の終了後のインラップ中において、ドライバーはFIAが設定した最大時間を超えて第2セーフティカーラインから第1セーフティカーラインの区間を走行してはならない。例外的な事情がスチュワードによって認められた場合を除き、これに違反した場合は『不要に低速な走行をした』と見なされ、違反とされる可能性がある」さらに、スポーティングレギュレーション第33.4条には、以下のように規定されている:「いかなる時も、マシンは不要に低速で、または不規則に、あるいは他のドライバーや人物にとって潜在的に危険であるとみなされるような方法で走行してはならない」これらの規定に照らし合わせたうえで、FIAは両者が最大タイムを超過した走行を行ったとして、スチュワードが調査を実施。その結果、戒告という裁定が下された。角田裕毅のケース──「デルタタイムを誤って判断した」角田裕毅は、スプリント予選で12番手という結果を残したが、その過程で規定の最大走行時間を超過したことが判明した。FIAの調査に対して角田裕毅は、「デルタタイム(制限時間に対する余裕)」の計算を誤って見積もり、「間に合う」と思っていたにもかかわらず、実際には設定タイムを超過していたと説明した。FIAは、角田裕毅の走行が明確に時間超過をしていたこと、また過去の類似事例との整合性を考慮し、スチュワードは戒告という処分を科すことを決定した。この戒告は角田裕毅にとって今シーズン2度目のものであり、F1の競技規定では「1シーズン中に5回の戒告を受けた場合、10グリッド降格のペナルティが自動的に科される」と定められている。したがって、角田裕毅はこの時点で3回目以降の戒告が即座に重大なレース影響を及ぼす「リスク領域」に入ったことになる。ジョージ・ラッセルのケース──「前方とのギャップを誤解した」ジョージ・ラッセルもスプリント予選で13番手につけたが、彼も角田裕毅同様、セーフティカーライン間の最大タイムを超過していたと認定された。FIAによれば、ラッセルはスチュワードに対し「最終セクターで前方のマシンとのギャップを大きく取れると考えていたが、実際にはそうならなかった。そのため自ら速度を落とし、スペースを確保しようとした結果、結果的に最大タイムを超過してしまった」と説明したという。FIAはラッセルの事情説明および走行記録、他の関連資料を精査した上で、これまでの類似ケースと照らし合わせ、彼にも戒告を科す決定を下した。なお、ラッセルにとってこれは2025年シーズンで初めての戒告であり、現時点でペナルティ発動の対象とはならない。FIAはデータ、映像、無線など複数情報源を検証今回の裁定にあたり、FIAは両ドライバーのオンボード映像、チームラジオ、タイミングテレメトリー、GPSデータなどの技術的情報を詳細に検討。また、各ドライバー本人および各チームの代表者を呼び出し、事実関係について聴取を行った。その上で「一貫性のある処分を下す」との原則に基づき、両者に戒告を科す判断を下した。この処分によるスプリント予選のグリッド順位(角田裕毅12番手、ラッセル13番手)に変更はなく、グリッドペナルティ等の即時影響もない。しかしながら、特に角田裕毅にとっては今後の週末で再び同様の違反があった場合、シーズン中のペナルティ発動につながる可能性が極めて高くなるため、走行管理や時間配分に一層の慎重さが求められる。今季後半戦を迎えるにあたり、こうした“見落としがちな違反”がタイトル争いやチーム戦略に思わぬ影響を及ぼす可能性もあり、各ドライバーとチームには改めて細部までのルール遵守が求められる状況となっている。
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