メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフは、F1モナコGPのレース中にウィリアムズ・レーシングのジェームス・ボウルズ代表から届いた「謝罪のテキストメッセージ」について明かした。レース中、ウィリアムズの2人のドライバーがメルセデス勢のジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリの前でスロー走行を行ったことについてのやり取りだったという。ヴォルフとボウルズは旧知の仲であり、ボウルズはかつてメルセデスでヴォルフの下に勤め、現在はウィリアムズでチーム再建に取り組んでいる。
2025年のモナコGPでは、新ルールとして全車に2回のピットストップが義務付けられ、各チームは多様な戦略に対応を迫られた。ウィリアムズはカルロス・サインツJr.とアレクサンダー・アルボンが交代でスロー走行を行い、もう一方のドライバーが余裕を持ってピットアウトできるギャップを作るという巧妙な戦術を採用。その結果、アルボンは9位、サインツJr.は10位でフィニッシュし、ウィリアムズにとって4戦連続のダブルポイント獲得となった。ヴォルフはレース中のボウルズとのやり取りについて、オートスポーツの取材に対しこう明かした。「彼(ボウルズ)からレース中にメッセージが届いたんだ。『申し訳ない』ってね。前の状況から、ああするしかなかったんだろう。私の返事は『分かってる』だった」「ジェームスは私の仲間の一人だし、恩着せがましく聞こえてほしくはないが、彼は今やチーム代表として立派にキャリアを築いている。あれは彼がやらなければならなかったことだ。ポイント圏内に2台を持ち込んだわけだしね」「最初にああなったのは、レーシングブルズがスロー走行で我々を詰まらせたからだ。だから彼らも同じように対応したんだよ」一方ボウルズは、レース中のF1TVのインタビューで、この戦術が本来のレーシングスタイルではないとしながらも、チームの利益を優先した判断だったと述べた。スロー走行の影響を大きく受けたのはラッセルで、苛立ちからヌーヴェルシケインでショートカットしてアルボンをオーバーテイクし、結果的にドライブスルーペナルティを受けることとなった。ヴォルフは、メルセデスの厳しいレース展開の要因について、予選での不運を挙げる。「レーシングブルズのように力以上の結果を出したチームもあった。その位置を守るために、彼らもウィリアムズも戦っていた。我々はその犠牲者だったが、それは予選がうまくいかなかったからだ」「我々には速いクルマがあった。キミ(アントネッリ)はバリアに接触したが、それはルーキーにありがちなミス。そしてジョージ(ラッセル)は突然パワーを失った。フロントロー、あるいはそれ以上のポテンシャルはあったはずだ」「その後はトラックの“楽しい”部分でレースをする羽目になったが、あの位置では何もできなかった」「ブレーキングで5.5秒も遅いと、まったく別のトラックにいるような感覚になる。違うブレーキングポイントで、ジョージもクルマを止めるのが難しくなって直進してしまった。あれはフラストレーションの表れだろう。何か違うことをしようとした。でもドライブスルーは覚悟していたし、10秒ペナルティで済めばと思っていた。結局、結果は変わらなかった」ヴォルフはさらに、戦略判断についても誤りはなかったと主張し、モナコ特有のフォーマット変更の必要性にも言及した。「今朝は戦略についてかなり面白い議論をした。『早めにピットに入って、追い上げればいい』と私が言ったんだ。DTMではうまくいった戦略だった。最後尾から勝ったこともある」「でも、我々の戦略チームの賢い人たちは、モナコではそれが通用しないと示してくれた。実際、早めにピットに入った他の車を見ても、それで状況は変わらなかったよ」