センチュリー最上位化、レクサスは「誰の真似もしない」、GRは年末からオートサロンで大型発表、ダイハツは「私に大発明」トヨタは10月13日、生配信番組を通じて新プロジェクト「TO YOU(あなためがけて)」の全貌を発表した。トヨタ、レクサス、センチュリー、GR、ダイハツの5ブランドを横断し、一人ひとりに寄り添うモビリティを目指す新戦略を打ち出した。
9月19日から特設サイトで展開してきたカウントダウン企画の最終章として公開された今回の発表では、各ブランドの役割再定義と新CMが一斉にお披露目された。番組には豊田章男会長、サイモン・ハンフリーズCBOをはじめ、クリエイターの篠原誠氏、野沢たけし氏、小西俊之氏らが出演し、ブランドごとの方向性や今後の展開を語った。5ブランド連携の新体制トヨタは5ブランドの役割を「サッカーチームのように個性を発揮しながらも、全体でひとつの方向へ進む関係」と表現した。センチュリーはレクサスのさらに上位に位置する「One of One」のハイエンドブランドとして再定義。レクサスは「誰の真似もしない」をコンセプトに独創的な価値を追求する。トヨタは「TO YOU(あなためがけて)」という新しいブランドメッセージを掲げ、従来の「For All」ではなく「For You」、すなわち個人を起点とするブランドへと変化する。GRはモータースポーツ由来の情熱と“野生味”を強調し、年末から来年1月にかけての大型発表を予告。ダイハツは「小さいからこそできること。私に大発明。」をテーマに、日常に寄り添う発想で新しい暮らし方を提案する。豊田会長は「これからはスペックではなく共感でブランドを語る時代。商品そのもので経営する」と語り、従来の広告的アプローチから脱却する方針を打ち出した。センチュリー 伝統を受け継ぎ“再誕”する最上位ブランドサイモン・ハンフリーズCBOが制作を担当したセンチュリーの新CMでは、創業期の豊田喜一郎や中村健也らの思想を軸に、手仕事と哲学の継承を映像で表現。白黒の過去からカラーの現在へと移り変わる演出で、伝統と革新の融合を象徴している。映像の終盤にはオレンジ色の「センチュリー クーペ」が登場し、ブランドの未来を象徴する存在として注目を集めた。これによりセンチュリーはレクサスよりも上位に位置づけられ、「Above Lexus」という明確な立ち位置を確立する。レクサス 「DISCOVER」精神で未知の領域へ野沢たけし氏が手がけたレクサスの新キャンペーンは、「DISCOVER(発見)」をテーマに掲げる。映像には6輪仕様の「LS」コンセプトが登場。LSの“S”を“Sedan”ではなく“Space(空間)”と再定義し、移動そのものを新しい体験に変える発想を提示した。続編となる映像はモビリティショーで公開予定であり、レクサスが「誰の真似もしない」存在として未来のモビリティを切り拓く姿を強調する。トヨタ 「TO YOU」でプロダクトが語るブランドへ篠原誠氏によるトヨタの新CMは、ブランド再構築の象徴として制作された。「TO YOU(あなためがけて)」という言葉が示すように、これまでの“みんなのトヨタ”から“一人ひとりのトヨタ”へと焦点を移す内容となっている。映像の中では、新型カローラのコンセプトが先行公開され、製品そのものがブランドのメッセージを語るスタイルが採用された。さらにアフリカ向けのキット車や、地域別のラストワンマイルモビリティなど、多様な「あなた」に応える取り組みも進められている。GR “野生味”を磨く 年末からオートサロンで大型発表へGRブランドでは、リアルな走りを重視した実写演出が特徴。既存の「Wild Moment」に続き、今回の映像でも実車撮影にこだわり、エンジン音や振動など五感に訴える仕上がりとなっている。配信では2000GT、LFA、新型GR(仮称)のエンジン音がティザー公開され、年末から東京オートサロンにかけて大規模な発表が行われる予定である。GRブランドの新章を告げる重要な節目となりそうだ。ダイハツ 「小さいからこそできること。私に大発明。」小西俊之氏が制作を担当したダイハツのCMは、1959年のミゼット以来続く“小さな発明”の精神を現代的に再解釈したもの。日常の中にある気づきと創造を軸に、身近な技術で暮らしを支える姿を描いた。CMの最後には、期間限定で赤い「D」ロゴを「大発明」ロゴに変更。ショー会期中はこの新ロゴが使われ、遊び心のある演出で話題を集める見込みだ。社内でもポスター展開を行い、社員のモチベーション向上にもつなげている。モビリティショーでの“一体展示”今回のモビリティショーでは、トヨタ、レクサス、センチュリー、ダイハツの4ブランドが同じホールで合同展示を行う予定。各ブランドのCMに登場した新型カローラ、6輪のLS、アフリカ向けキット車など、映像と現物がリンクする構成となる。一方、GRは別会場の東京オートサロンで大規模な展示を予定しており、年末からの発表に焦点を当てる。制作の舞台裏 スピードと共感を重視した“CM相談室”今回のCM群は、豊田章男会長が直接フィードバックを行う「CM相談室」で制作が進められた。会長は「共感を生まない映像はすぐにやり直し」とし、開発チームに迅速な判断とチャレンジを促したという。スペックよりも共感、数字よりも心を動かす物語を重視する姿勢が徹底されている。今後の展開と注目ポイント新CMは本日より順次オンエアを開始。モビリティショーでは各ブランドの実機展示や続編映像の公開が予定されている。センチュリー・クーペや6輪LSは本気開発中で、量産時期は未定だが、いずれも「夢で終わらせない」としている。GRブランドは年末から2026年初頭にかけて新型車の正式発表を控えており、ダイハツは“暮らしの発明”をテーマにした地域密着型モデルを展開予定だ。トヨタは「商品でブランドを語る」新時代に踏み出した。センチュリーが最上位として独立し、レクサスが未知の領域に挑む。GRは走りで感情を動かし、ダイハツは生活に寄り添う発明を生み出す。そしてその中心にあるのが、「あなためがけて」という言葉である。モビリティを通じて、人と社会に寄り添うトヨタの新たな章が始まった。