トロ・ロッソが、2018年からホンダのF1パワーユニットを搭載することになると報じられている。ここまで報じられた内容では、マクラーレンがルノーからエンジン供給を受ける“空き枠”を作り出すために、トロ・ロッソがルノーとの契約を解消し、2018年からホンダからF1パワーユニット供給を受けるというもの。
また、ルノーはトロ・ロッソとの契約を解消する見返りとして、昨年から獲得を狙っていたとされるカルロス・サインツを獲得するとされている。マクラーレンはルノーのパワーユニットを確保、ルノーは望んでいたカルロス・サインツの獲得、F1としてはホンダのF1撤退回避と各当事者が満足できるストーリーとなっている。ホンダとしても、辛辣な批判を繰り返してきた名門マクラーレンよりも、中団チームのトロ・ロッソで挽回を狙うチャンスかもしれない。トロ・ロッソとホンダとの契約を承認する立場となるレッドブルとしても、トロ・ロッソでホンダのF1エンジンのパフォーマンスが確認されれば、ホンダのエンジンに切り替え、ワークスチームをもつルノーでは実現できなかったワークス契約を確保することができるかもしれない。また、ローン移籍であれば、ルノーで1~2年の経験を積んだカルロス・サインツを呼び戻す可能性を残すことで、マックス・フェルスタッペンやダニエル・リカルドを引き抜かれた場合を担保できることになる。だが、トロ・ロッソのメリットは何だろう? ホンダのF1パワーユニットは、現状、F1で最も信頼性とパフォーマンスが低いエンジンだと言っても過言ではない。さらに今年チームの大半のポイントを獲得しているカルロス・サインツまで失うことになる。トロ・ロッソは、レッドブルのジュニアドライバーを育成するレッドブルの“Bチーム”として存在。7月にホンダのトロ・ロッソへのエンジン供給が報じられた際、Auto Motor und Sport は「レッドブルのBチームは成長しており、ホンダと独自路線を進むことになるかもしれない」と報じた。しかし、エンジンに限って言えば、トロ・ロッソはコスワース(2006年)、フェラーリ(2007年~2013年)と2014年まで親チームのレッドブルとは異なるエンジンを搭載してきた。だが、マクラーレンとホンダと決別した場合、今回、トロ・ロッソは少なくともホンダから“独占供給”を受けることになる。そして、Sky Sports は「将来、ホンダが買収を求めた場合、フルワークスチームとしてレッドブルの傘の外で成長する可能性がある」と報じている。実際、過去にレッドブルのオーナーであるディートリッヒ・マテリッツはチーム売却の意向があることを明らかにしている。そうなった場合、トロ・ロッソは単なるレッドブルの若手を鍛えるための“Bチーム”としてではなく、自立したチームとして存在できることになる。また、トロ・ロッソは後半4戦のフリー走行1回目のシートをインドネシアの富豪の息子ショーン・ゲラエルに売っており、財政的に厳しい状況にあるのは想像に容易い。スポンサーの少ないトロ・ロッソは、親チームよりもレッドブルにとって財政負担になっているとされている。一部報道では、ホンダの育成ドライバーである松下信治が金曜フリー走行に出走するもされており、エンジン供給以外にホンダから何らかの支援を受ける契約が結ばれる可能性がある。現在、ホンダは“スペック4”エンジンの開発を進めており、F1プロジェクト総責任者を務める長谷川祐介は、2017年シーズンが終了するまでにホンダのエンジンはライバルのルノーを追い越せると考えている。「ホンダの状況は良くなっています。2018年にはより強くなるでしょう」と長谷川祐介は7月に述べている。そして、2018年のパワーユニットは現在のコンセプトを発展させていくとしている。現在、トロ・ロッソは40ポイントでコンストラクターズ選手権6位につけているが、7位のハースとは5ポイント差、8位のルノーとは6ポイント差。ホンダがルノーに匹敵するパフォーマンスを発揮できれば、パワーユニットを変更しても失うものはそれほど大きくないかもしれない。また、ファンとしても、シャシーに定評のあるトロ・ロッソ・ホンダと、同じくシャシーには自信をみせているマクラーレン・ルノーとの“因縁バトル”は興味深いものになるだろう。
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