スーパーアグリF1チームは、2年半のF1レース活動の中で4台のマシンを投入した。それぞれのマシンを振り返ってみる。参戦1年目は、4年落ちのアロウズA23を改良したSA05に始まり、第12戦ドイツGPでSA06Aを投入。さらに第14戦トルコGPではマイナーチェンジ版のSA06Bを投入し、最終戦で10位に食い込むなど、大きな進化を遂げた。
2年目は事実上のホンダの2006年型マシンRA106をベースとしたSA07で、スペインGPで初ポイント、カナダGPで6位3ポイントを獲得するなど、印象的な戦いを見せた。最後の年となる2008年は、ホンダRA107を改良したマシンで参戦。失敗作といわれるRA107に加え、資金難により冬季テストにも参加できず、また開発もほとんど進められなかったため、戦闘力を見せることはできなかった。SA05予定していたホンダの1年落ちのマシンBAR007が使えなくなり、4年落ちのアロウズA23をベースに、ホンダRA806Eエンジンを搭載したスーパーアグリの1号機。2006年のレギュレーションに適合させるためにエンジンの前後にスーペサーをいれて寸法を合わせたり、ギアボックスにあわせるためにエンジンを持ち上げるなどの対応が施された。4年落ちのマシンでは、新型タイヤのグリップを使いこなすことはできず、ドライバーはマシンバランスに苦労した。SA06の投入が控えていたが、改良には40億の費用が投じられた。SA06A第12戦ドイツGPで満を持して投入されたSA06。念願のホンダ製ギアボックスを搭載し、エンジンを本来の位置に搭載できるようになり、重量配分が向上。また、SA05と比較して20kgの軽量化がなされたため、セッティングの幅が広がった。特にエンジン搭載位置の低下とギアボックスのナロー化は、空力面に多くの貢献をもたらし、不足していたダウンフォースを確保。リアサスペンションのジオメトリーも一新され、コーナーリング時の挙動が大幅に改善された。SA06B第14戦トルコGPから投入されたSA06B。アロウズA23の流れをくむツインキールのキール部を短くする改良が施され、ロワアームの取り付け位置が5cmほど引き上げられた。これにより、ジオメトリーも変更され、ゼロキールに近い空力特性を獲得。さらにアップライトの改良により、タイヤのリムが広がり、最新仕様のタイヤを使いこなせるようになった。シーズンを通して細かなエアロパーツを投入してダウンフォースの獲得に尽力。着実にポテンシャルをあげ、最終戦ブラジルGPでは佐藤琢磨が10位完走を果たした。SA07スーパーアグリのデザインチームとホンダの栃木研究所によって共同開発されたSA07。事実上、2006年型ホンダRA106がベースに、2007年のレギュレーションにあわせた改良が施されたマシン。スペインGPでは新しいカーボンギアボックスを搭載、チムニーやウィングレット、リアウィングのパッケージなど、積極的なアップデートが見られた。その後も細かな改良が加えられ、最終戦ブラジルGPでも新しいリアウィングを持ち込むなど、限られた資金のなか、健闘をみせた。このマシンでスーパーアグリは4ポイントを獲得した。SA08Aホンダの2007年型マシンRA107をベースに、2008年レギュレーションにあわせてドライバーヘッドプロテクターを装着するなどしたRA107の改良型マシン。ギアボックスは4レースギアボックスに対応するために内部部品と油圧システムの強化が施されており、ケーシングも変更されている。このギアボックスは、ホンダRA108搭載のものと同じもので、SA08は言わばRA107のフロントとRA108のバックエンドをあわせたようなハイブリッドマシンだ。挙動はRA107の不安定さをそのまま引き継いでいた。