佐藤琢磨が、アンドレッティ・オートスポーツでの初戦となった2017年 インディカー 開幕戦 セントピーターズバーグのレース週末を振り返った。2017年ベライゾン・インディカー・シリーズの開幕戦セントピーターズバーグ。今季移籍した名門チームのアンドレッティ・オートスポーツからこの一戦に挑んだ佐藤琢磨は、数ラップをトップで周回した後に5位でフィニッシュするというエキサイティングなレースを演じた。
AJフォイト・レーシングのNo.14をつけたマシンで戦い続けて4年。今季からはNo.26アンドレッティ・ダラーラ・ホンダでシリーズに臨むが、佐藤琢磨がいわゆる有力チームからインディカーに参戦するのはこれが初めてのこと。計4台をエントリーするアンドレッティで佐藤琢磨のチームメイトとなるのは、ライアン・ハンターレイ、マルコ・アンドレッティ、そしてアレクサンダー・ロッシの3人だ。「今回の挑戦は本当に楽しみですが、いっぽうでフォイトを離れることをとても淋しく思っています」と佐藤琢磨。「なにしろ4シーズンをともに過ごした家族も同然のチームですから、たくさんの思い出があります。また、AJとラリー・フォイト、それにチームの全員から受けたサポートは本当に素晴らしいものでした。最後の2シーズンはやや苦戦を強いられましたが、僕たちはこれまでに何度も素晴らしいパフォーマンスを発揮しました。今年のセントピーターでも、顔を会わせるたびに互いにサムアップしました」「いっぽう、アンドレッティは仕事の進め方が異なるので、いまは新しいスタイルを学ばなければいけません。チームはここ何年間かにわてってたくさんの成功を収めてきましたが、とりわけインディ500でのパフォーマンスには目を見張るものがありました。また、アンドレッティは4台体制でインディカーにエントリーした最初のチームで、いまではガナッシやペンスキーも彼らに追随しています。その仕事ぶりはF1を彷彿とさせるものがあります。もちろん、F1はまた別世界ですが、チームのリソースや仕事のクォリティはバツグンに高く、マイケル・アンドレッティはチームに全力を投じています。もっとも高いレベルでインディカーを戦うという意味において、僕にとってはおそらく最高の環境だと思います」佐藤琢磨には新しいチームだが、そこには懐かしい顔もあった。佐藤琢磨がインディカーに挑んだ初年度と2年目に在籍したKVレーシングでエンジニアを務めたガレット・マザーシードと、アンドレッティで再びコンビを組むことになったのだ。「これは本当に素晴らしいニュースでした。なにしろ、あの頃に比べると、僕たちは互いにたくさんの経験を積んできましたから。また、チームは新しくても、そこに気心が知れたスタッフが在籍しているというだけでほっとします。インディカー・シリーズに活動の場を移してから、ガレット、ジェリー・ヒューズ(元スーパーアグリで、インディカーではレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングでエンジニアを務めた)、ドン・ハリデイ、ラウル・プラドス(最後のふたりはAJフォイトに所属)といったエンジニアたちと一緒に仕事ができて、僕は本当に幸運でした」まだアンドレッティとの契約が完了していなかったため、昨年12月にセブリングで行われたテストに参加できなかった佐藤琢磨は、フェニックスでのオーバル・テストに2日間臨んだほか、先ごろ実施されたセブリングで1日テストを行ったのみ。ただし、シミュレーターや様々な準備を行うことで「これまででもっとも充実したシーズンオフを過ごすことができました」と佐藤琢磨は語る。ただし、そうした成果が週末の滑り出しに反映されることはなかった。金曜日最初のプラクティスは16番手。その日の午後に行われた2回目のプラクティスではタイムを記録する前にクラッシュを喫した。「インディカーを戦うようになって、いちばん困難な金曜日だったかもしれません。とても過酷な1日でした。最初のセッションは、満足できるとはいえないものの、それほど悪くはありませんでした。僕たちのチームではセットアップのフィロソフィーを4人で分担して試すことになっていますが、僕はちょうど調子が出始めてきたところでした」「ところで、リーグが指定するブレーキは今季からブレンボではなくなりました。新しいブレーキは硬い素材を用いたもので、作動温度域が非常に限られていることが特徴です。このため、温度が低い状態では満足に作動しませんが、高温になると急激に減速Gが立ち上がります。このブレーキでレースが走りきれるかどうか、誰もが悩んでいたほどで、リーグは開幕直前にブレーキダクトのモディファイを認めることになったほどです。第2セッションが始まるとき、ペダルのフィーリングが驚くほどソフトだったので、走行前にブレーキのエア抜きを行いました。アウトラップの段階でブレーキとタイヤはしっかり準備が整っていると思えたので、ブレーキペダルを踏み込みましたが、まったく感触がありません。そしてタイヤがロックしてコントロールを失い、ウォールにヒットしたのです。これで走行時間を大幅にロスすることになると同時に、ソフトコンパウンドのレッドタイアを試す機会も失ってしまいました。今季より、2回目のプラクティスで1台あたり1セットずつレッドタイアが試せるよう、ルールが改正されていたのです」「チームのメカニックたちは最高の仕事でマシンを修復してくれましたが、土曜日に行われた3回目のプラクティスではまだチームメイトから大きく遅れている状態でした。けれども、3人のチームメイトとエンジニアたちが全力でサポートしてくれました。これは本当にこのチームの強みだと思います」その言葉どおり、佐藤琢磨は最初の予選グループで3番手のタイムをマーク。12台が進出する第2セグメントに易々と駒を進めた。ここで4番手につけた佐藤琢磨はファイアストン・ファスト6に挑み、5番グリッドを勝ち取ったのである。「マシンがあんなにいい状態になって、本当に最高の気分でした。思い切り攻めることができたうえに、とてもコンペティティブで、不満はなにもありません。もしかしたら、もっといい成績を残せたかもしれませんが、状況が状況だっただけに、この結果には心から満足できました」ところが、日曜日のウォームアップはあまりコンペティティブではなかったうえに、チームメイトのハンターレイにブレーキトラブルが発生、ウォールに真っ直ぐ激突するという事件が起きる。それでも佐藤琢磨は110周の決勝で好スタートを決めることができた。レースが始まると、ジョ...
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