佐藤琢磨が、インディカー第15戦ソノマのレース週末を振り返った。苦労の末にマシンを仕上げた佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングだったが、鮮やかにトップ10を走っていながら、避けきれないアクシデントのため入賞のチャンスを逃したばかりか、続いて起きた「逃げ場のない事故」のためリタイアを余儀なくされた。
佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングは、マニュファクチュアラー・テストとオープン・テストのふたつに参加してソノマのレースに備えたが、前者にはほぼ全チームが、そして後者にはすべてのチームが参加したため、結果的には全体的なコンペティションのレベルを押し上げることにしか結び付かなかった。「マシンのことを学ぶにはとてもいい機会で、たくさんのアイテムを試しました」と佐藤琢磨は述べた。「ミドオハイオのレースが終わってから、僕たちは高い戦闘力を取り戻せるよう強く希望していましたが、バランスとグリップについていえば、どちらのテストでも満足のいくレベルには到達しませんでした。それでもいろいろなことにチャレンジし、間違いなく進歩もしましたが、レースウィークエンドを迎える前に行わなければいけないことはたくさん残っていました」「ソノマは、コースレイアウトの面だけでなく、舗装の面でも、丘の上という地形の面でもトリッキーなサーキットです。午前中から午後にかけて風向きは180度変化するほか、日中に吹く風は砂やホコリを路面に向けて巻き上げるため、コースコンディションは目まぐるしく変化します」「それに加えて、今回ファイアストンは新しいタイアを持ち込みました。これは、新品の状態では高い性能を発揮しますが、デグラレーションがとても大きいので、タイアの使用本数が限定されているとテストはとても困難なものになります。せっかくセッティングを変更しても、コースコンディションもそのたびに変わってしまうので、比較テストを行うのは非常に難しいのです。これは誰にとっても同じことですが、僕たちは満足のいくセッティングを見つけられませんでした」フリープラクティスを通じて各チームが前進を果たすなか、当初の苦しい状況を考えれば佐藤琢磨も徐々に戦闘力を取り戻していった。その結果、予選の第2セグメント進出まで、ポジションにしてあとひとつ、タイムでは0.15秒差まで追い上げたことは立派な成果だったといえる。こうして、佐藤琢磨は13番グリッドからレースに挑むことが決まった。「少しずつ、僕たちが進むべき方向が見えてきました。そして走るたびに状況はよくなっていきました。十分な速さだったとはいえませんが、昨年のソノマにおけるチームの状況を考えると、大きな進歩を遂げたといえるでしょう」「レッドタイアが十分なグリップをもたらしてくれると期待して、僕たちは予選に臨みました。今回も、いつもと同じく大変な接戦となりました。第2セグメントに進出できなかったのはもちろん残念ですが、フィーリングは少しずつ改善されていました。それに、ある意味で13番グリッドはベストなポジションともいえます。なぜなら、第2セグメントに進めば、そこでもレッドタイアを使うことになるからで、11番グリッドや12番グリッドを手に入れるためにレッドタイアを使ってタイアの割り振りで苦労するよりも、その直後のグリッドから新品のレッドタイアをたくさん携えてスタートするほうが戦略的には有利だと考えられます」「僕たちは、最初のスティントをプライムのブラックタイアで走り、そのまま集団に留まりながら走行してからレッドタイアに交換する作戦をよく用いますが、ソノマはオーバーテイクがとても難しいので、プライムタイアでスタートすることには大きなリスクが伴います。なぜなら、ひとたびレッドタイアを履くライバルたちに抜かれると、順位を取り戻すのは不可能に近いからです。でも、レッドタイアだったらポジションを守ることができるし、うまくいけば順位を上げられるかもしれません」スタート直後、この作戦はうまくいきそうな展開になり、オープニングラップで佐藤琢磨は11番手まで駒を進める。レース序盤のコーション・ピリオドでは、トニー・カナーンに対してリスタートでポジションを落としたものの、佐藤琢磨はすぐさまふたつ順位を上げてトップ10入りを果たした。別のリスタートではマルコ・アンドレッティやカナーンと好バトルを演じたのに続き、次にイエローが出るまでに9番手となり、非常に好調そうに思えた。「ソノマでは信じられないほどオーバーテイクが難しいので、ほとんどの場合、チャンスがやってくるのはリスタートのタイミングとなります」「誰もがとてもアグレッシブでした。たくさんのクルマに、タイアと接触した跡が残されていて、僕はバトルを楽しみました! けれども、困ったことが起きたのは、その後のことでした」その事件は、3回目のリスタートでグレアム・レイホールがスピンしたことをきっかけにして起こった。トニー・カナーンとバトルをしていた佐藤琢磨はコース中央を走行していたため、完全に行き場を失ってしまったのだ。「ターン1からターン2にかけて、3ワイドや4ワイドになりながら丘を駆け上がり、エキサイティングなバトルをしていました。ものすごく混み合っていましたよ! ターン3の進入でスピンしたグレアムはコース上に戻ってくると、横滑りしながら丘を登っていきました。TKと僕はサイド・バイ・サイドをしていて、レイホールのマシンはコースの右側、僕は真ん中で、そしてTKは左側にいました。もしも僕が左に進路を変えていたらTKと接触していたことでしょう。したがって唯一の望みは、グレアムのマシンがコースの外側に移動していって、僕がふたりの間をすり抜けていくことでしたが、そうはなりませんでした。僕はグレアムのフロントウィングに乗り上げる形となり、右フロント・サスペンションにダメージを負ってしまいます。とにかく、2台横並びになっていたので、まったく避けようがありませんでした」ピットに戻ってきたマシンをAJフォイト・レーシングは懸命にリペアしたが、このため佐藤琢磨は大きく遅れたため、残り周回数はいくらかでもポイントの上乗せを狙うか、別のセットアップを試すために費やされることとなった。「データ収集のためには、少しでも多く走行することが重要でした。いずれにせよ、僕はコース上に留まらなければいけなかったので、レースを戦っている他のドライバーには進路を譲らなければいけませんでした。...
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