佐藤琢磨が、インディカー第8戦テキサスのレース週末を振り返った。AJフォイト・レーシングがこれほど好調なシーズン序盤を迎えたのは、IZODインディカー・シリーズが現在のように国際的なエントリーを集めるようになって以来のことだが、その功績の大半はドライバーの佐藤琢磨に帰することができる。
そしてインディカー・シリーズは、フォイトの生まれ故郷であるテキサス州に建つテキサス・モーター・スピードウェイでの第8戦を迎えることになった。チームにとって、これが極めて重要な一戦であることはいうまでもない。残念ながら、金曜日のプラクティスと予選では、彼らが期待するような成績を収められなかったが、それでも佐藤琢磨はダラーラ・ホンダを駆って11位に食い込み、ポイント・ランキングでは5番手に浮上してフォイトのホームタウンを後にした。「テキサスを訪れるのはいい気分です」と佐藤琢磨は語る。「たくさんのチームスタッフが自分たちの家族を連れてレースにやってきましたが、これは素晴らしいことだと思います。地元のファンからも声援を送っていただいたほか、スポンサーのABCの皆さんにも応援していただきました。まるでファミリーのような素敵な雰囲気が、そこには漂っていたのです」悲しいことに、No.14をつけたダラーラ・ホンダは、彼らが期待したような金曜日を迎えることができなかった。バンク角が大きく、極めてハイスピードな1.5マイル(約2.4km)オーバルでは、予選前のプラクティスが1度だけしか予定されていなかったにもかかわらず、ギアボックス・トラブルのため佐藤琢磨はプラクティス中にマシンをガレージに止めることになったうえ、予選もまるで戦えなかった。「本当に難しい滑り出しでした。セッションの時間はいつもより長めでしたが、予選前のプラクティスは1回しか行なわれなかったのです。ギアボックスに問題を抱えてしまったため、僕はマシンをガレージに運び込むと、直ちに修復作業が始まりました。問題はこれだけに留まらず、今年3月にテキサスでテストを行なったときとは、マシンのバランスがまるで変わってしまったことも難問でした。しかも、テストのときは華氏65度(約18℃)ほどだったのが、金曜日は華氏80度(約27℃)まで気温が上がったため、ダウンフォースの量もグリップレベルもまったく変わっていたのです」「タイヤも大きな問題でした。ファイアストンは、コンパウンドも構造も異なるまったく新しいタイヤを持ち込んでいました。一部のチームは別のコースでこのタイヤをテストしていましたが、僕たちにそのチャンスはなく、おかげでバランスがまるで変わってしまいました。このため、プラクティス中にいいセッティングを見つけ出すのはほとんど不可能な状態でした」「メカニックたちは懸命にギアボックスの修復作業を行ってくれましたが、予選前の車検を受ける列には、わずか2分遅れで並ぶことができませんでした。おかげで、僕たちは新しいセットアップを施したものの、その手応えを掴むチャンスは失われてしまったのです。これも本当に難しい問題でした」その夜にはもう1度プラクティス・セッションが開かれ、ここで佐藤琢磨は6番手のタイムをたたき出すことになる。「幸運なことに、実質的にレース前のウォームアップ走行となる1時間半のセッションが行われました。このときのほうが、土曜日の夜に行われる決勝レースに近いコンディションになりました。この日は夜遅くなっても比較的寒くありませんでしたが、それでもランチ・タイムに比べれば気温は大きく下がっており、ここでようやく多少のセットアップ作業を行う条件が整いました。けれども、走行時間は30分ほどしかなかったので、セットアップの変更に必要な時間はあまりなく、やはり決勝レースでのセッティングは想像で進めなければならない部分が残りました。それでも、スティント中にマシンの特性がどのように変化し、トラフィックの影響がどの程度かを確認できました。この結果に僕たちはとても勇気づけられました」21番グリッドからスタートする佐藤琢磨にとって、何よりも重要なのは何度もフルコーションとなることである。しかし、この点でも佐藤琢磨の思い通りに事が運んだとは言いがたかった。「スタートでは少しポジションを上げたほか、レースが少し落ち着くと何台かをオーバーテイクし、ピットストップの様子も僕たちのほぼ期待どおりとなりました。おかげで、レースの1/4が終わったころ、僕たちはトップ10まで躍り出ていたのです」佐藤琢磨にとっては好ましい展開だった。そしてレース半ばにオリオール・セルヴィアがスピンし、この日3度目にして最後のフルコーションとなるまでに、佐藤琢磨は6番手まで浮上していた。「基本的に順調のように思えました。ただし、コース上の戦いはとてもタフなものでした。ニュータイヤを履いた直後はかなりいいペースで走行できましたが、昨年よりもダウンフォースを削り取られてしまったため、タイヤにとっては非常に厳しい状態となりました。おかげでデグラレーションが激しく、タイヤのパフォーマンスが大きく落ち込むとともに、マシンのバランスも大きくシフトするような状況でした」「コクピットからはフロント・アンチロールバー、リア・アンチロールバー、それにウェイトジャッカーなどを調整できますが、これらをすべて使っても、バランスのシフトを補うことはできませんでした。僕たちはニュータイヤを装着してもフルスロットルでは走行できませんでした。これはとてもチャレンジングで、エキサイティングな戦いでしたが、それと同時に困難なレースでもありました。チームによってピットストップのタイミングが大きくずれていたのは、これが原因だったといえます」「タイヤが新しければコースのアウト側からでもオーバーテイクできますが、タイヤの性能が低下し始めると、戦いは非常に厳しいものとなります。そんなときは、順位を保つのに精一杯でした。ピットストップを行ったときはまだ6番手につけていましたが、その直後にイエローが提示されたため、僕は不運にもほぼ最後尾まで順位を落とすことになりました」最終的に佐藤琢磨は11番手まで挽回してレースを終えた。「僕たちのマシンは、優勝争いができるほどのパフォーマンスはありませんでしたし、それを改善するのに必要な時間もありませんでした。フロントウィングとタイヤの空気圧は何度か変えましたが、とにかく苦しいレースでした。ピ...