グランツーリスモ5に究極のレーシングカー「レッドブルX1」が誕生した。エイドリアン・ニューウェイ、レッドブル・レーシング、ポリフォニー・デジタルが共同開発した「レッドブルX1」は、最高時速450?、馬力1483bhp、ダウンフォース9800Nという夢のバーチャル・レーシングカー。ポリフォニー・デジタルは、空力のエキスパートであり天才デザイナーであるエイドリアン・ニューウェイに、レギュレーションに縛られないクルマの実現を依頼。これによって生まれたのが、グランツーリスモ5のX1プロトタイプだ。
現実世界のテクノロジーを駆使したX1は、現実とはかけ離れたパフォーマンスを生む。「ソニーから連絡があり、レギュレーションを無視したクルマを一緒にデザインできないかと言われた。純粋にスピードだけを考えたクルマだ。そこからクルマの諸元を思いついて、何枚かスケッチして主要コンポーネントをどのようにパッケージングするかを考えた」と、レッドブル・レーシングのチーフ・テクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューウェイは当時を思い出す。ニューウェイとグランツーリスモのチーフ・デザイナーである山内一典氏の英ミルトンキーンズでの出会いから、ふたりの頭脳の共同作業が始まった。ニューウェイの技術的なアドバイスによって、現実には存在しないが技術的には実現可能なクルマが開発された - それがX1だ。山内氏はこのように語る。「X1は、地上最速のクルマを目指したものだ。実際の作業を開始する前にかなり長い時間をかけて構想を練ったが、それも楽しかった。エイドリアン・ニューウェイとレッドブルが関わってくれたおかげで、正確なシミュレーションを行うことができ、非常に高レベルの目標達成が可能となった」ボディワーク、エンジンの大きさ、タイヤの種類、車体重量…、通常ならばクルマのパフォーマンスを制限する要素は全て除外された。考慮されたのは物理の法則だけ。自分のビジョンの実現という、一生に一度のチャンスを得たエイドリアン・ニューウェイは、このプロジェクト全体を大きく加速させた。デザインと機能の完璧な融合に対する彼の情熱が、この天才イギリス人にインスピレーションを与えたのだ。「レーシングカーのデザインは、芸術とエンジニアリングの融合だと思っている。物理の法則とエンジニアリング技術によって、そのデザインが機能するものなのか、そして実現可能なものなのか否かが決まる。しかし、それだけではアイデアも湧かないし、ひらめきもない。そこに、芸術的センスが要求される」ニューウェイ流の創作プロセスには、彼が納得するまでの時間が必要だ。現代の自動車物理学、空力学、そして、それによって生じる周辺の気流など、全ての要素を熟慮して、初めて彼の中にひらめきが生まれる。シャワーを浴びている最中にその瞬間がやってくることもあるというが、そこから初めてのニューウェイは新しいクルマのデザインを追い求めることができるのだ。ニューウェイがX1に用いた革新的技術の中でも最も注目なのはファンカー・テクノロジー。ファンによって車体底部の空気を強制的に吸い出し、空気圧を下げることによって巨大なダウンフォース(9800N)を作り出すというシステムだ。これは革命的だったブラバムBT46Bを思い起こさせる。ファンカーと呼ばれたこのブラバムは、F1に1戦出場(そして優勝)したのみで、ルール違反としてすぐに姿を消した。「レギュレーションがなかったら、クルマのスピードが速くなりすぎてしまうんだ。1970年代には‘ノーレギュレーション’という試みもあったが、スピードが速くなりすぎて、それが最後になってしまった。30年、40年後の今それをやったら、とんでもないスピードになってしまうだろうね。そうは言っても、70年代のデザイナーたちがうらやましいよ。当時のレギュレーションは今よりもずっと規制が少なかったからね。彼らはぼくたちよりも、もっと自由に自分を表現できたんだ」と、F1やインディーで成功を収めているニューウェイは説明する。さらにデザイン作業が進められたX1は、まるでSF映画に出てくるようなシェイプとなり、コースでは、通常の低速コーナーもかなりの速度で走り抜く。最新のデータでは、このマシンの側面にかかるGフォースは人体の限界を試す8Gを越え、トップスピードは時速450?以上。「全ての制約を取り払えば、ショッキングなほど速いクルマが作れる可能性が存在する」と、ニューウェイはGT5の鈴鹿のコースでX1のシェイクダウンテストを行ったセバスチャン・ベッテルを例に挙げる。初めての走行で、彼はキミ・ライコネンのF1のコースレコードを20秒以上上回るタイムを叩き出したのだ。なぜ、X1は究極のレーシングカーと言えるのか?このクルマの乾燥重量は545?。2.8秒で時速120mp/h(時速195km/h)まで加速する直接噴射式3000cc 6気筒V型ツインターボエンジンを搭載。ガラス製キャノピー、フルタイヤ・カウリングといった空気抵抗の少ないボディに加え、低速走行時にダウンフォースを増やすファンや、高速走行時の安定性を高めるフロント/リヤ・ウィングやリヤ・ディフューザーを備えている。この全てのコンビネーションが、究極のマシンを作り上げているのだ。このダイナマイトなバーチャルカーのテスト走行を最初に行ったひとりである、レッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテルはこのように語る。「エイドリアンのドリームカーのハンドリングは最高だった。鈴鹿ほど勇気と集中力を必要とするコースは他にはない。フルスロットルで130Rを走れば、X1のスピードと性能を本当に実感できるよ」X1のシェイクダウンのテストドライバーを務めた23歳のベッテルは、GT5の中でも、ヒーローカー・レベルにまで到達したプレイヤーたちにX1のずば抜けた性能を披露してくれる。レッドブルX1が眠っているのは、あの有名なハンガー7。プレイヤーはここでクルマをピックアップする。もしくは、このテクノロジーとアートとエンターテイメントの殿堂を「ガレージ」に選択して、キャリアモードでゲームを進める間、ここに全てのクルマを停めておくことができる。X1プロジェクトは、ひとりのデザイナーの夢を現実にした。イギリス人のニューウェイも、このプロトタイプの仕上がりには興奮気味だ。「X1は進化の形だ。実証されているテクノロジーを、最も良い形でひとつのデザインにまとめ上げた。レーシングカーの未来だと言えるが、このクルマは現在でも製造可能だ。そして、セバスチャンが見せてくれたように、本格的なハンドリングと驚異的なスピードが体験できるバーチャルカーに仕上がった。我々は未来を今テストドライブできるんだ」 関連:・グランツーリ...