レッドブル・レーシングの技術責任者ピエール・ワシェが、今季終盤にさらなるアップグレードを投入予定であることを明らかにした。チームは現在、メルセデスおよびフェラーリとの間でコンストラクターズ選手権2位をめぐる激しい争いを繰り広げている。今季は中盤に失速したものの、モンツァでの復調劇によって再び勢いを取り戻した。
マックス・フェルスタッペンのポール・トゥ・ウィンを支えたのは、大幅に改良されたフロアだった。垂直フェンスや外縁部の形状を再設計したことで、RB21のグリップと安定性が大きく向上。続くバクーとシンガポールではさらなる改良を施し、フェルスタッペンはそれぞれ1位と2位を獲得している。ワシェは『RacingNews365』に対してこう語った。「我々にはまだ投入予定の開発パーツがある。次戦ではないが、その少し後になるだろう。コンストラクターズ選手権はまだ終わっていない。我々にとって非常に重要なんだ。どんなレースでも全力で戦うのがこのチームの哲学で、何かを諦めるということはない」空力改良で復調したRB21、モンツァの進化を基盤に今後投入される新パッケージの詳細は明らかにされていないが、重点が置かれているのは「ダウンフォースの一貫性」と「フロントエンドの安定性」だ。これらはシーズン前半にレッドブルが苦しんだ領域である。モンツァ仕様のフロアが空力的なベースを築き、シンガポールで投入された新フロントウイングは、フェルスタッペンが両マクラーレン勢を上回る結果を導いた。伝統的にレッドブルが苦戦してきたハイダウンフォース・サーキットでの結果に、ローラン・メキース代表も「この成果は非常に意味がある」と強調している。ワシェは、アップデートの投入時期がチームの運営スタイルそのものに根ざしていると説明した。「我々はシーズン序盤、多少の妥協をした。しかし、これはいつも通りのやり方なんだ。開発が少し遅れ、次のマシンの最終化も少し遅い。ただし、それが我々のシステムであり、その恩恵を今シーズンに生かしている。我々は他とは少し異なるが、製造面では非常に強力な能力を内部に持っている。それが我々の強みだ」2026年に向けた開発との両立現在レッドブルはコンストラクターズランキング4位(290ポイント)につけており、フェラーリ(298ポイント)、メルセデス(325ポイント)を射程圏内に捉えている。次戦アメリカGP(オースティン)を前に、2位争いはますます混戦模様だ。ただし、今季終盤まで現行マシンの開発を続ける姿勢は、一部で2026年の新レギュレーション対応に遅れが出るのではないかという懸念を呼んでいる。来季からはシャシーの軽量化、新しい空力プロファイル、そして自社製パワーユニット「RBパワートレインズ」のデビューといった大変革期を迎える。しかしワシェは、この取り組みが長期計画を妨げることはないと明言した。「そうは思わない。今やっている開発も、これから投入するものも、すべてかなり前から準備してきたものだ。昨日思いついたようなものではない」内部体制の強みを生かす“並行開発”レッドブルでは、空力部門がミルトン・キーンズに、そしてパワーユニット部門がミルトン・キーンズおよび日本のさくらの施設に分かれており、両部門が同時進行で進められている。この分業体制こそが、現行マシンと2026年プロジェクトの両立を可能にしている。フェルスタッペンは依然としてオスカー・ピアストリ、ランド・ノリスに次ぐランキング位置にあるが、理論上はタイトル争いに残っており、ワシェの言葉どおり「一戦も諦めない」姿勢が続いている。
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