レッドブル・ホンダF1は、2020年のF1世界選手権 最終戦 F1アブダビGPの決勝で、マックス・フェルスタッペンが、ポールポジションから全ラップをリードする“完勝”で終えた。ポールポジションを獲得し、1コーナーを制してオープニングラップをトップで戻ってきた時点で勝利はほぼ確定していた。抜きにくいヤス・マリーナ・サーキットでは、タイヤの違いによるオーバーテイク以外はほとんど見られなかった。
レッドブル・ホンダは、今回のF1アブダビGPで弱点であるストレートを重視したパッケージを持ち込んだ。これまでヤス・マリーナ・サーキットではコーナーの多いセクター3で優位性を発揮していたレッドブルのマシンだが、今年はそこではなく、オーバーテイクの攻撃・防御にとって重要になるセクター1、セクター2のストレート区間に焦点を合わせた。それがマックス・フェルスタッペンのポールポジションに繋がった一因であり、タイヤマネジメントという点でも最適解だった。そして、1番の差を生んだのはホンダF1の信頼性だった。17戦と当初の予定よりもレース数が少なくなった2020年の世界選手権だが、ホンダF1は4人のドライバーともにPUの使用をレギュレーション通りの年間3基以内に収め、PUマニュファクチャラーの中では唯一のノーペナルティーでシーズンを終えた。一方、メルセデスはレース前にMGU-Kの寿命に問題を抱えており、パワーを下げざるを得ない状況に陥っていた。実際、レースではメルセデスのPUを搭載するセルジオ・ペレス(レーシング・ポイント)がMGU-Kの故障によってリタイアを喫している。オーバーテイクに大きなスピード差を必要とするヤス・マリーナ・サーキットでフルパワーで走れないことは致命的だった。そして、11周目にセルジオ・ペレス(レーシングポイント)がメカニカルトラブルでコース上にストップし、バーチャルセーフティカー導入からセーフティカー出動したことも有利に働いた。ここでマックス・フェルスタッペンはハードタイヤに交換。フィニッシュまで走り切れる残り周回数であり、メルセデスはタイヤ戦略で揺さぶりをかけるチャンスを失った。終盤、ルイス・ハミルトンが『タイヤが終わった』と揺さぶりをかけるもレッドブル・ホンダ陣営は対応する必要はなかった。タイヤマネジメントに関してもレッドブル・ホンダはメルセデスを上回っていた。逆にアレクサンダー・アルボンは3位のルイス・ハミルトンに約1.5秒差まで迫った。マックス・フェルスタッペンは「タイヤマネジメントがよかったですし、マシンバランスがとてもよくてドライビングが楽しかった」と振り返る。アレクサンダー・アルボンも「今日はスティントの最初からタイヤをマネージメントしたけど、レース終盤でみんなタイムが落ち始めても十分なタイヤライフが残っていたので、少し大事にいき過ぎたのかもしれない」と語っている。全戦で完走を果たしたルイス・ハミルトンに対し、5回のリタイア、その大部分がレース序盤でのものだったマックス・フェルスタッペンのパワーユニットには寿命という点でアドバンテージがあったのは確かだ。それでも、メルセデス勢はPUの寿命について言い訳をすることはなかった。ルイス・ハミルトンは「今日の彼らは本当に速かったし、勝利に値する。今週末の彼らは僕たちよりずっと先にいて、彼らのペースについていくことができなかった」と語る。バルテリ・ボッタスも「今日の彼らは単純に速すぎてついていけなかった。今日に向けてレースペースは同じくらいだろうと予想していたけど、彼らはペースをコントロールすることができて必要なギャップを築いていった」と続けた。それでも17戦というスケジュールのなかでしっかりとエンジンをやりくりして勝利を収めたことはホンダF1にとって大きな収穫になったに違いない。ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治は「すでに発表されているように、来年はホンダにとってF1に参戦する最後の一年になります。チャンピオンシップ獲得を目指し、ファクトリーではさらなるパフォーマンスアップに向けて、チームとともに開発を懸命に続けていきます」と締めくくった。
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