レッドブルF1のチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーが、通算9勝目を記録したマックス・フェルスタッペンのF1 70周年記念GPでの見事なドライブやこの勝利を呼び込んだ決断について語った。シルバーストンの緒戦となるF1イギリスGPで大敗を喫していたレッドブル・ホンダだったが、2週目となるF1 70周年記念GPでは、ハードタイヤスタートというタイヤ戦略とマックス・フェルスタッペンの見事な走りによって今シーズン初勝利を獲得した。
クリスチャン・ホーナーが、レッドブル・レーシングの公式サイトで70周年記念GPの週末を振り返った。パーティはお預けメルセデスを実力で破った先週末の日曜日は、チームにとって大きな励みになった。未来のスターのひとりが目の覚めるようなドライブを見せたF1 70周年を祝うにふさわしい勝利でもあった。とはいえ、表彰式が終わったあともやや浮かれていたと言えば嘘になるだろう。集合写真を撮るためにチームが集まり、ドライバーたちをレッドブル・エナジードリンクでずぶ濡れにして成功を祝ったが、そのあとの祝賀パーティはなかった。また、グランドスタンドのファンたちに祝福してもらえる興奮を感じられなかったのも残念だった。チーム全員が撤収して自宅へ戻ると、その日の夜には私も子供たちの元へ帰り、彼らが寝付く前に本を読み聞かせてやることができた。数時間前には70周年記念GPで勝利したというのに、その夜にはヤギの本を読み聞かせているのは非常に奇妙な気分だった!祝福の瞬間はこの先もまだあると確信しているが、現在の情勢がこれまでの習慣を変えたのは確かだ。マックスが実現したミラクル今回の優勝で、マックスは開幕戦オーストリアGPでリタイアを喫したにもかかわらずドライバーズ2位に浮上した。開幕戦の彼はリタイアするまで2番手を走行していた。あのレースで18ポイントを加算できていれば差はさらに縮まっていたはずだ。しかし、失った18ポイントがかなり大きかったとしても、"たられば" の話はできない。現状が私たちの実力で、私たちはまだ勝負に残っている。おそらく、今回のマックスの勝利を呼び込んだ最大の要因は予選前日に起きていた。70周年記念GPでトラックサイドエンジニアを務めていたウィルが予選でマックスにハードタイヤを履かせるプランを提案した。マックスはハードタイヤでコンペティティブなタイムを記録することができていた。また、私たちも自分たちのカットオフタイムの予想に自信を持っていて、Q2でもう一度コースに出なくても済むだろうと考えていた。しかし、実際は非常に際どかった。マックスはカットオフタイムまであとコンマ数秒で、またハードタイヤはシングルラップのペースでかなり劣るため、Q2は9番手で終わった。ここが重要な局面になった。あとはマックスがレースで上手くタイヤを管理できるかどうかだったが、彼は素晴らしい仕事をやってのけた。レース終盤、マックスは水分補給と手の消毒についてレースエンジニアと冗談を交わしていたが、あれは彼がいかにマシンをコントロールできていたかを示していた。私たちは、他のチームと異なる戦略を選び、リスクを承知で賭けに出ることを厭わない。これは長年に渡り私たちの最大の強みのひとつであり続けている。私たちはリスクを取れる準備が整っている。しかし、これは、ドライバーたちが彼らの仕事をこなさなければならないことを意味する。そして、マックスは見事に仕事をこなしてくれた。両マシンのレースペースも実に素晴らしかった。勝利が翼をさずける開幕3連戦ではファクトリー全体が信じられないほどハードに仕事をしてくれたが、今回のようなリザルトはそのようなハードワークが何のためにあるのかを再確認させてくれる。今回の勝利は、今も長時間働いてくれているスタッフに私たちができる最高の恩返しだ。このようなリザルトは間違いなくチームに活力を与えてくれる。過酷なスケジュールでは特に重要だ。月曜日の朝にファクトリーへ向かうと、どこを見ても笑顔だった。開幕数戦はメルセデスが圧倒的な強さを見せていたが、私たちはコース上で正々堂々と勝負して彼らにを打ち負かした。実に素晴らしい気分だ。この勢いを保つ必要がある。勝ち取らなければならない状況の方が、チャンピオンシップの価値が高まると信じている。2010シーズンと2012シーズンのタイトル獲得は最終戦までもつれ込んだが、2011シーズンや2013シーズンの独走でのタイトル獲得よりもはるかに充実感があった。最後の最後まで戦い続けた末のタイトル獲得には真の高揚感があった。そして今、私たちはまた戦っている。ルイス(ハミルトン)も「独走するより争って勝ちたい」と発言していたと思うが、私たちは彼の好きなようにはさせないつもりだ。またも印象的なレースを見せたアレックスアレックスは土曜日のQ3でのパフォーマンスに満足しておらず、ソフトタイヤで想定していたタイムにコンマ数秒及ばなかったが、日曜日にまたも素晴らしいパフォーマンスを披露した。パフォーマンス面においては、アレックスは私たちのあらゆる期待に応えてくれた。レースがあと数周長ければシャルル・ルクレールにも追いついていただろう。私が最も感銘を受けたのはアレックスのレースクラフトだ。彼のレース運びはクリーンで安定していて、実に勇敢だった。コプスのアウトサイドで何度も素晴らしいオーバーテイクを仕掛けていた。あとは自信だ。アレックスはチームメイトよりもF1経験が浅いことを全員が思い出すべきだ。世間は「F1は学びの場ではない」と言うが、若いドライバーが学習と成長を続けており、様々な意味でF1は学びの場だと言える。マックスも同じことを言うだろう。どんなスポーツであれ、トップレベルと競い合いながらすべてをマスターするのは時間が必要だ。マシンが気まぐれになる時もあるのでF1の学習曲線は特に険しいが、私たちはマシンと両ドライバーのベストパフォーマンスを引き出すべく一丸となって取り組んでいる。
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