F1 70周年記念GPの予選Q3でダニエル・リカルド(ルノー)が1回目のアタックに続いてミディアムタイヤで2回目のアタックのためにコースインしたとき、F1のテレビ解説陣は混乱に陥っていた。予選Q3でソフトタイヤの使用義務はないのか? 答えはノーだ。各F1ドライバーには、週末に合計13セットが用意される。昨年までとは異なり、新型コロナウイルスの影響を受けてカレンダーがまだ未確定の今季は、F1ドライバーは各イベントでハードの2セット、ミディアムの3セット、ソフトの8セットと同じタイヤを割り当てられる。
予選Q3タイヤに義務付けられていたのはその“選択”の義務だった。各F1ドライバーは予選Q3のためにソフトを1セット残さなければならず、トップ10に入ったドライバーはその1セットを返却するが、残りのドライバーはそれを保持できる。F1の競技規則では「少なくとも1セットが義務付けられるQ3タイヤ仕様でなければならない」「義務付けのQ3タイヤ仕様1セットはQ3の前に使用も返却もできず、Q3で資格を得た車両の同一仕様の1セットのタイヤはQ3終了後3時間半以内に、電子的に供給業者に返却しなければならない」と記されている。ちなみに決勝では、ミディアムタイヤもしくはハードタイヤのいずれか1セットを“使用”する義務がある。F1 70周年記念GPの予選では、上位2台がミディアム、4番手のマックス・フェルスタッペンがハードでタイムを記録するという珍しい状況となった。シルバーストンでの2戦目は先週のレースの焼き直しにならないよう1段階柔らかいタイヤコンパウンドが選択された。当初からソフトタイヤはレース用には不向きであることは明らかだったが、決勝でのスタートタイヤが決まるQ2では誰もソフトでタイムを記録することはなかった。ピレリのF1責任者を務めるマリオ・イゾラは「今回は非常に珍しい予選セッションとなった。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは、ハードタイヤでQ2を通過したことで、明日はハードタイヤでスタートする。我々のF1史のなかでおそらく初めてのことだ」とコメント。「また、Q3ではトップ3がソフトタイヤではなくミディアムを使用した最速タイムを記録した。これらの事実だけでも、今週のシルバーストンでのダブルヘッダーの第2レースへのノミネートが興味深いものであったことを示している」