ピレリが、2014年 第13戦 F1イタリアGPが開催されるモンツァをタイヤメーカーの観点から解説した。ミラノに位置するピレリの本社から車で30分ほどの距離にあるモンツァで開催されるイタリアGPは、ピレリにとってのホームレース。今年のF1タイヤは、この本社で設計されている。有名なパラボリカのような高速コーナーによって、非常に大きな横方向の荷重がかかり、長いストレートとそれに続く低速シケインのため、急加速と急減速といった大きな縦方向の荷重も発生する。
このため、ピレリは、タイヤレンジ中で最も硬い組み合わせであるP Zeroオレンジ・ハードとP Zeroホワイト・ミディアムを選択。タイヤにかかる荷重とともに、モンツァの有名な特徴である高い縁石がタイヤ構造へダメージを与える。ドライバーたちは、最速のレーシングラインを見出すために数多くの縁石を使い、タイヤは、衝撃を吸収する際にサスペンションの一部としての役割を担う。今シーズン、レギュレーションによって空力ダウンフォースが削減されているため、コーナリングスピードは遅くなるものの、マシンは、シーズン中でも屈指の最高速度である約360km/hに達する。スパ同様、モンツァでは、タイヤに大きな負荷がかかる。ストレートでのトップスピードは360km/hを超える。短時間で250km/h減速するブレーキングエリアでは、4.5Gの縦方向の荷重が発生する。このようなコンディションが重なることによってコンパウンドの温度が上昇し、トレッド表面は130℃に達する。ミディアムタイヤは作動温度領域が低く、広範囲の低い温度条件下でも最適な性能を発揮できるコンパウンド。ハードタイヤは、対照的に作動温度領域が高く、高温のコンディションに適したコンパウンド。通常、モンツァでの気温は温暖だが、昨年の決勝直前の雨を含めて、過去には雨が降ったこともある。速いラップタイムの鍵となる高速ストレートでのスピードを最大限にするために、ドライバーは、シーズン中で最も低いダウンフォースセットアップを使用する。このため、コーナー通過時に必要な全てのメカニカルグリップをタイヤが担うことになる。昨年の勝利戦略は1ストップだった。レッドブルのセバスチャン・ベッテルが、ミディアムタイヤでスタートし、23周でハードタイヤへ交換した。フェラーリのフェルナンド・アロンソは、ベッテルと同様の戦略を採り、5番グリッドからスタートして2位でフィニッシュしたポール・ヘンベリー (ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター)「ホームでのレースは、いつも我々に大きな喜びと誇りを感じさせてくれます。それは、通常レース開催地へ赴くことのない多くの同僚が、レースで活躍する自分達のタイヤを見ることができる唯一の機会だからです。“スピードの殿堂”として知られるモンツァでのホームレースは、その高速なレイアウトによって、シーズン中で最もタイヤに厳しいレースのひとつとなっています。一般的に、サーキットが高速になればなるほど、負荷に伴う熱の蓄積によってタイヤにはより厳しくなります。モンツァでは、ストレートでのトップスピードを最大限にするために、マシンは非常に低いレベルのダウンフォースセットアップで走行します。この点が、タイヤに新たな影響を及ぼします。それは、ダウンフォースが減少することによって、マシンはスライドしやすくなり、モンツァの鍵的要素であるブレーキングエリアでホイールをロックアップするリスクが高まるためです。ロックアップがフラットスポットを生成する可能性がありますが、今シーズンのタイヤ構造とコンパウンドによって、フラットスポットは以前よりも発生しにくくなっています」ジャン・アレジ (ピレリ・コンサルタント)「モンツァでのルールはただ一つ、300km/hよりも400km/hに近いトップスピードに対応する最適な方法を見出すことです。長いストレートでスピードを最大限にするために、非常に低いダウンフォースが求められます。したがって、ドライバーの主な課題はリアタイヤのケアになります。そのために、シケイン出口での良好なトラクションを得るセットアップが必要です。さもなければ、リアタイヤの摩耗が大きくなり、ブレーキ制動距離が長くなるため、ラップタイムの悪化につながります。しかし、それだけではありません。モンツァでのトップスピードは、マシンが今にもトラックから浮かび上がりそうな‘リフト'現象を感じさせます。これはモンツァでのみ体験できるもので、時にはストレートでマシンを直線上に維持することが難しく感じることさえあります。私は常にモンツァが大好きで、何度か優勝争いを演じました。グランドスタンド前でファンの歓声を聞くと、信じられないほどの感動を覚えます。私の時代は12気筒エンジンでしたが、今年はより静かな6気筒ターボエンジンですから、ドライバーたちは、ファンの歓声をより大きく感じることができるでしょう...」


全文を読む