野田英樹が、ル・マン24時間レースを総合26位で完走し、現役レーシングドライバーとしての活動に終止符を打った。野田英樹は、イギリスF3、国際F3000での活動を経て、1994年にラルースからF1に3レースにスポット参戦。その後はインディライツや、フォーミュラ・ニッポン、全日本GT選手権などに参戦していた。
今週末行われたル・マン24時間にはクルーズ・シラー・モータースポーツからLMP2クラスに参戦。今回のレース挑戦を最後に29年間に渡る現役レーシングドライバーとしての活動に終止符を打つことを発表していた。野田英樹昨年、40歳という人生節目の年齢を迎えた自分は、世界3大レースのひとつ『ル・マン24時間耐久レース』への挑戦を最後に引退を考えていました。しかし、23時間15分を走りきった段階でのリタイアという人生最大の悔しさを味わい、あと1年頑張って再びこの世界最高峰の耐久レースに挑戦し、自分自身の情熱を燃やし尽くそうと考えるようになりました。世界的な不況にもかかわらず、今回の僕の挑戦を理解し、支えてくれた日本のスポンサーの方々や、野田英樹を走らせるために頑張ってくれたチーム関係者の皆さんに、心から感謝しています。そして、長年、僕を支えてくれているファンの皆さんや友人の方々、そして苦楽を共にして戦い、励まし、支えてくれている家族のおかげで、今回の最後の挑戦が実現できる幸せを、ひとりのレーシングドライバーとして噛みしめています。思えば13歳でレーシングカートを初めてから29年間、レースが好きで、心から好きで、この世界でずっと頑張ってきました。マシンを操縦する魅力は僕にとってかけがえのないものですし、自分自身の才能を発揮できるサーキットという場所を愛してきました。本音を言えば、ずっと乗り続けていたいし、まだまだ現役で走り続けられる自信はあります。自分自身のためだけに走るのであれば、あと10年、50歳まででも走り続けたい。でも、自分のことだけを考えて走り続けることに対して、なぜか疑問を感じ始めたのです。本当に多くの人々に応援してもらえたことで、本当に幸せなレーシングドライバー生活を送ってきた自分は、世界中のサーキットで、最も多くのカテゴリーで戦ってきた日本人ドライバーだという自負があります。世界で最も経験を積んだ日本人ドライバーとして、その経験を次世代に伝えることを、自分自身の次のチャレンジにするのも面白いなという気持ちが芽生えてきたのです。世界で勝てるドライバーを育て上げていきたい。それが次の野田英樹の挑戦です。1年や2年ではなく、5年や10年のスパンで考えているだけに、だからこそいま、自分は現役から身を引くべきだと決意しました。正直、現役に未練がないと言えば、嘘になります。衰えたと感じたこともありませんし、もっともっと頑張りたいという気持ちが半分あります。でも40歳で引退して、次の挑戦をスタートするという自分の気持ちを1年間伸ばしたから、今年のル・マン24時間耐久レースで全力を出し切って、どんな結果にせよ、レースが終わった瞬間から、第2の人生に向けて全力で走り始めます。次世代のトップドライバーを育成するために走り始めるのです。それが僕の愛した、そして僕を愛してくれたモータースポーツの世界への恩返しだと思っています。最後のレースとはいえ、もちろん表彰台を狙える体制は整っています。確かにワークス勢と比較すれば性能的なハンディは明らかですが、24時間耐久レースは、人生と同じです。一所懸命に頑張り続ければ、きっとチャンスがある。野田英樹のレース生活29年間の集大成となる、本年度のル・マン24時間耐久レース挑戦を、皆さん、ぜひ応援してください。(2010.6.3)