フェルナンド・アロンソが、シンガポールに続き今季2勝目を挙げたF1日本GP。2度の世界チャンピオンであるアロンソの冷静なレース展開が際立ったレースだった。レースは、チャンピオンシップを争う2人が揃ってペナルティを受けるという荒れた展開。そんな状況の中、卓越したレース運びで優勝を手にしたのがフェルナンド・アロンソだ。
4番グリッドからスタートしたフェルナンド・アロンソは、オープニングラップの混乱を運よく避けて2番手に浮上。1回目のピットストップを短めにして、ロバート・クビサの前に出る戦略をとったアロンソは、第2スティントで驚異的な走りを披露。勝負所となるこのスティントでコンスタントに19秒台前半のタイムを刻み、1周ごとにコンマ3秒以上クビサを引き離す。2回目のピットストップ前にはその差を13秒にまで広げ、アロンソより長いスティントをとるクビサの前に悠々と出ることに成功した。ルノーのマシンの改善ぶりも称賛にあたる。クビサ、ライコネンがアロンソより前にピットストップしたところを見ると、マッサのミスはあったものの(といってもマッサはアロンソと同一周回でピットイン)、アロンソの予選4位は実力で勝ち取ったものといえる。レースペースでもコンスタントに19秒台を記録していたのは2台のルノーマシンだけだったし、ピットストップ後の重い状態でペースが激しく落ちなかったのもルノーだった。結果、ネルソン・ピケJr.もトヨタのヤルノ・トゥルーリを抑えて、4位でフィニッシュ。シンガポール以降、最も前進したチームと言えるだろう。逆に疑問符がついたのが、タイトル争いを繰り広げる、ルイス・ハミルトンとフェリペ・マッサのレースだ。チャンピオンに王手をかけているルイス・ハミルトンは、1コーナーで無理に突っ込む必要があったのだろうか?ライバルであるフェラーリをコース外に弾いただけでなく、チームメイトのヘイキ・コバライネンをコース外に追いやり、結果、オープニングラップで順位を落とすとともに、ドライブスルーペナルティを科せられた。チャンピオンを争うものとして、リタイアとペナルティは最も避けなければいけない。7ポイント差で首位に立っていることを考えれば、1レースでマッサに2ポイント以上離されなければ、タイトルを手に出来るのである。ハミルトンは昨年のブラジルGPでそれを体験しているはずである。スタートを失敗した焦りがあったかもしれないが、実際にマッサは5番グリッドからのスタートで後ろにいた。マッサもペナルティを科せられたことにより、“結果的に”2ポイントの損失に済んだが、もっと大きな損失になっていた可能性はある。マッサとの接触も、接近を察して内側にもう少しラインを空けていれば避けられたかもしれない。今シーズンは、他をラインに押し出すような強引な走りが目立つハミルトン。自業自得と言われても仕方がないのではないだろうか。そして、フェリペ・マッサ。予選を失敗し、レースでもシケインでハミルトンと衝突し、ペナルティを受けた訳だが、あそこで接触を抑えていれば5番手あたりでフィニッシュできた可能性があった。その後も、セバスチャン・ブルデーと接触するなど危なっかしいレースをみせた。2度の世界チャンピオンに輝いたアロンソは、当時“保守的”と言われながらも最終戦を見据えたレースを冷静に実行しタイトルを獲った。無理に勝利を追わない姿勢に賛否はあったが、大きなミスを犯すことはなかった。そして、貫禄さえ感じさせる走りで今回の日本GPを制した。レースドライバーに勝利を追うなとは言わないが、チャンピオンに相応しいレース運び、走りというものがあると思う。誰がチャンピンに輝くかはわからないが、そんなことを考えた日本GPだった。(F1-gate.com)