メルセデスは2026年F1プレシーズンテスト最終日、W17に革新的なリアウイング仕様を投入した。キミ・アントネッリが走行を担当したこの新仕様は、レギュレーションで定められた外形許容範囲ギリギリまで攻めた設計思想が色濃く表れた構成となっている。今回のアップデートは、テスト最終日に持ち込まれた点も含めて注目を集めた。ライバル勢に研究・解析の時間を与えないため、あえて公開を遅らせた可能性が高いとみられる。
“サドル型”ミニフラップで実質4エレメント化最も目を引くのは、リアウイング外側コーナー部に“サドル”のように配置されたミニフラップだ。この小型フラップは2分割構造となっており、内側の狭い部分は固定セクションに取り付けられ、外側の広い部分はアクティブエアロ作動時に回転する可動セクションと連動する。両セクションの後縁にはそれぞれ小型のガーニーフラップが備えられている。特にインボード側は、メイン上段エレメント後縁との近接によって生じる空力的影響に対応するため、湾曲したコーナー形状を採用している。このミニフラップは、メイン上段エレメントとの間にスロットギャップを形成しており、さらに内側セクションは独自のミニ・スロットギャップセパレーターで下段要素と接続されている。結果として、この外側領域では従来の3エレメント構成を実質的に4エレメント化するレイアウトとなっている。外側セクションはエンドプレートに接続され、独自の“ミニエンドプレート”を形成。その結果、エンドプレート後方にはより大きなノッチ形状が生まれ、チームはここでチップボルテックスの制御を狙っている。大きく湾曲した新エンドプレート形状もう一つの大きな変更点はエンドプレートだ。従来仕様と比較すると、前縁から上端にかけて大きく湾曲したシニュアス形状が採用されている。このカーブは上部だけにとどまらず、全体的にスウィープしたプロファイルとなっており、旧世代車両で見られたロールオーバー状の接合部とは異なる設計思想が見て取れる。現行レギュレーションではその意匠は必須ではなくなっている。この新しいエンドプレート形状は、内側面の気流と圧力分布に影響を与えるだけでなく、外側から見た前後方向の露出面積にも違いを生み出している。さらに、ウイング要素の許容ボックス領域下部にも形状変更が加えられており、旧設計で見慣れた処理とは異なるアプローチが採用されている。アクティブエアロ移行を滑らかにする狙い今回の変更は単なるリア荷重増加を目的としたものではない。特に、固定フラップ外側セクションと可動フラップのピボット周辺における気流管理の改善が主眼にある。固定部と可動部の境界付近には約2センチの小型エアロタブが追加され、そこにもガーニータブが設けられている。この領域は気流密度が高く、アクティブ機構の作動によって挙動が敏感に変化するゾーンだ。狙いは二つある。第一に、ストレート走行時のドラッグ低減性能を、気流密度変化によって損なわせないこと。第二に、フラップが閉じた際のリア荷重の立ち上がりをより緩やかにし、ローダウンフォース状態からハイダウンフォース状態への移行をスムーズにすることだ。2026年レギュレーションではストレートラインモードとコーナーモードの切り替えがより積極的に用いられるとみられている。その中でメルセデスは、リアウイング単体の絶対性能だけでなく、“切り替え時の挙動”という動的領域にまで踏み込んだ解決策を提示した形だ。テスト最終日に投入されたこの“サドル型”リアウイングは、開幕戦オーストラリアGPに向けたメルセデスの本気度と、空力面での攻勢を象徴するパッケージと言える。